花房秀三郎(読み)はなふさひでさぶろう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「花房秀三郎」の意味・わかりやすい解説

花房秀三郎(はなふさひでさぶろう)
はなふさひでさぶろう
(1929―2009)

癌(がん)ウイルス癌遺伝子分野で独創的な研究業績をあげた分子生物学者。兵庫県生まれ。1953年(昭和28)、大阪大学理学部化学科を卒業し、大学院修了後、同大学微生物研究所助手を経て1961年に渡米した。1973年ロックフェラー大学教授に抜擢(ばってき)された。おもな研究材料はペイトンラウス(1966年ノーベル賞受賞)が発見したニワトリの癌(ラウス肉腫(にくしゅ))を起こすウイルスで、感染に必要な補助ウイルスや酵素を発見した。また、正常細胞の中にある癌遺伝子原型をウイルスが取り込み、癌遺伝子になることを実験で証明し、癌遺伝子の概念を一変させた。さらにいくつもの発見を通じて細胞の癌化の仕組みを解明したとして、1982年にアメリカの医学界でもっとも権威あるラスカー賞を日本人として初めて受賞、1983年度の朝日賞、1991年(平成3)の文化功労者、1995年の文化勲章も受けた。大阪大学時代から共同研究者だった照子(1928―1996)夫人を亡くした後、懇請されて1998年に帰国し、大阪バイオサイエンス研究所所長に就任、日本の研究環境の改善などに尽力した。平成21年3月、肝臓癌による肝不全死去

田辺 功]


花房秀三郎(はなぶさひでさぶろう)
はなぶさひでさぶろう

花房秀三郎

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「花房秀三郎」の意味・わかりやすい解説

花房秀三郎
はなふさひでさぶろう

[生]1929.12.1. 兵庫
[没]2009.3.15. 大阪,吹田
分子生物学者。遺伝子研究の権威。1953年大阪大学理学部化学科を卒業後,同科の特別研究生となる。1958年同大学微生物病研究所助手,1960年理学博士号取得。1961年カリフォルニア大学,1964年コレッジ・ド・フランスの研究員を経て,1966年ニューヨーク公衆衛生研究所癌ウイルス研究部長,1973年ロックフェラー大学教授,1998年同大学名誉教授となる一方,大阪バイオサイエンス研究所所長に就任,2005年同名誉所長。細胞生物学,分子腫瘍学を専門分野とし,鳥類の RNAウイルス(→レトロウイルス)を研究テーマに,ラウス肉腫ウイルスの研究で補助ウイルスの存在を発見,その感染には逆転写酵素が必要であること,さらにラウス肉腫ウイルスで活性化する癌遺伝子が細胞由来であることを発見するなど,独創的で影響力の大きい発見を数多くなした。1985年アメリカ科学アカデミー外国人会員,1991年文化功労者に選ばれ,2000年ロックフェラー大学名誉博士になるとともに日本学士院会員となる。1982年ラスカー賞,1993年ゼネラル・モーターズ・スローン賞,1995年に文化勲章受章。

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百科事典マイペディア 「花房秀三郎」の意味・わかりやすい解説

花房秀三郎【はなふさひでさぶろう】

ウイルス学者。兵庫県生れ。大阪大学理学部卒業。同大学微生物病研究所助手を経て,アメリカに渡り,1973年にロックフェラー大学教授となる。のち帰国し,1998年に産学協同研究施設の大阪バイオサイエンス研究所所長となる。ロックフェラー大学名誉教授。ニワトリの癌ウイルスの研究から,〈癌遺伝子〉という新しい考え方を実証した。そうした功績により,1982年にアルバート・ラスカー基礎医学研究賞を日本人として初めて受賞した。1991年に文化功労者となり,1995年には文化勲章を受章した。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「花房秀三郎」の解説

花房秀三郎 はなふさ-ひでさぶろう

1929-2009 昭和後期-平成時代のウイルス学者。
昭和4年12月1日生まれ。36年アメリカにわたり,48年ロックフェラー大教授となる。平成10年大阪バイオサイエンス研究所所長。ウイルスの発がん遺伝子とおなじ遺伝子が正常細胞にも存在することを動物実験で証明。昭和57年ラスカー基礎医学賞。平成7年文化勲章。12年学士院会員。平成21年3月15日死去。79歳。兵庫県出身。阪大卒。

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