細胞の機能に重点を置き、広義には発生や免疫などの生物現象を細胞の性質から解明しようとする学問分野をいう。形態学を中心とする歴史の長い細胞学に対して、細胞生物学という呼び方はより広範なもので、近年用いられるようになった。この学問の初期の歴史は細胞学の歴史と重複しているが、1934年ミトコンドリアが分離され、細胞分画法の発展の糸口を開いて以来、自然科学の他の分野で発達しつつあった知識と技術を応用して、多面的に細胞の性質をとらえる研究が盛んになった。超遠心機によって可能になった小胞体、リボゾームなどの分画を含めた細胞分画法の完成、クロマトグラフィー、電気泳動などの生化学的技術、放射性同位元素を利用した代謝経路の研究とそれを形態との関係に適用したオートラジオグラフィー、細胞培養技術の発達、細胞融合や核移植、抗原抗体反応を利用した免疫組織化学やラジオイムノアッセイなどの研究方法の進歩に応じて、核、ミトコンドリア、色素体、小胞体などの微細構造と機能、とくに分子遺伝学、呼吸、光合成、タンパク質合成の機構との関連、細胞周期を中心とした細胞増殖の研究、微生物の性と遺伝、筋収縮、アメーバ運動、原形質流動、食細胞運動、繊毛運動、細胞質分裂などの細胞運動の機構、細胞膜の構造と物質透過や興奮伝導の関係、発生過程における細胞分化の機構、免疫系細胞の役割と抗体産生の機構、放射線や薬物による細胞障害、ウイルスと細胞の相互関係、ホルモンの作用機構や分泌機構、細胞の老化、細胞の進化などの研究分野において目覚ましい発達を遂げた。これらの知識の集積は、たとえば細胞構造から生物を真核生物と原核生物に二分する考え方などのように基本的な生命観に大きな影響を与えつつある。
[大岡 宏]
…20世紀中ごろから電子顕微鏡による観察技術が急速に進歩して,細胞内部の微細構造が詳細に捕らえられるようになり,また,同じころに超遠心分離機を利用する細胞分画法が確立されたこととあいまって,生細胞から分離された各種細胞小器官の微細構造と,その代謝機能の局在性とが直接関連づけられるようになった。 現在,いろいろな細胞の微細構造ならびにその代謝機能が明らかにされるに及んで,生物の違いや細胞の違いを超えた共通普遍性を基盤に,細胞の特異性を理解し,また,研究する細胞生物学cell biologyが大きな発展を遂げている。
【原核細胞と真核細胞】
細胞には,原則的に1個の核様体nucleoid,あるいは核nucleusがあって,その生物種に固有の遺伝子(DNA)のすべてがそこに局在している。…
…また細胞の研究は,形態学,生理学,生化学,発生学,遺伝学ならびに進化など多くの分野の研究方法を用いて行われるものである。 生物学の研究方法は科学技術の進歩とともに精密になり,適用の範囲も拡大して上記の各研究分野の間で方法上の大きな相違がなくなるとともに,境界領域での研究もおおいに進み,現在では究極的に細胞の構造と機能に帰結されるすべての分野を総合して細胞生物学cell biologyと呼ぶようになっている。したがって伝統的な細胞学という呼称は狭義に解釈され,細胞の形態を中心とした学問にあてられることが多い。…
※「細胞生物学」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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