朝鮮,新羅の青年貴族集会の指導者。上級貴族の15,16歳の子弟を花郎として奉戴し,そのもとに多くの青年が花郎徒として集まって集会を結成していた。花郎に奉戴された者は,半島統一の英雄金庾信(きんゆしん)を含め新羅滅亡までに200余人を数え,各花郎に属した花郎徒はそれぞれ数百人から1000人に及んだと伝えられている。彼らは平時は道義によってみずからを鍛え,歌楽や名山勝地での遊楽を通じて精神的,肉体的修養に励んだ。そして戦時には戦士団として戦いの先頭に立ち,活躍した。その起源について,《三国史記》《三国遺事》ともに真興王代(540-576)の制定によるものと伝えているが,川前里書石(慶尚南道蔚州郡)の〈乙巳年銘文(525)〉に花郎と思われる人名がみられ,法興王代(514-540)にはすでに存在していた可能性が強い。その原型は部族社会の青年集会に求められるが,6世紀初頭における新羅の国家的発展の過程で,花郎を中心とする青年戦士の集会に変化し,国家的公認を受けたものと思われる。自己犠牲の精神を養う花郎集会は,国家にとっては人材の養成,登用のための格好の組織であった。花郎は新羅固有の習俗に根ざすものであったが,同時に儒・仏・道三教と結びついて独自の発展をとげた。特に弥勒信仰の影響のもとに寺院,僧侶と密接な関係をもった。また神仙思想と結合して,やがてその習俗は〈風流〉〈風月道〉と称され,花郎も〈国仙〉〈仙郎〉と称されるようになった。
執筆者:木村 誠
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朝鮮の新羅(しらぎ)時代、貴族の子弟からなる青年集団が奉戴(ほうたい)した美少年。またそうした習俗。朝鮮音でファランという。源流は原始韓(かん)族の男子集会舎に求められ、高句麗(こうくり)の扃堂(けいどう)も同様な性格のものと考えられる。6世紀の真興王代に美少年2人を粧飾(しょうしょく)して花郎とよび、それを中心に貴族の子弟を二分し、互いに対立して道義、歌舞、武技などを磨かせたのが始まりとされる。花郎の数は(したがって集団の数も)しだいに増え、新羅末期まで全代を通じて200余人はいたというが、名を伝えているのは三国統一の英雄金庾信(きんゆしん)など20余人にすぎない。機能は戦士団であり、教育機関であり、弥勒(みろく)信仰を奉ずる宗教的集会でもあり、新羅の発展に大きく寄与した。しかし高麗(こうらい)時代以降は変質し、李朝(りちょう)時代には男覡(だんげき)、倡優(しょうゆう)などの呼称となった。
[田中俊明]
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…562年には高霊加羅をはじめ加羅諸国を傘下におさめ,漢江流域を制圧し,東海(日本海)岸では咸鏡南道北部まで勢力をのばし,ここに四方軍主をおいて,地方制度を州・郡まで整備した。 ついで真平王代(579‐632)では,中央官職や軍官職・軍団など諸制度の整備をすすめたが,その官制は貴族体制の制度化で,まだ官僚体制ではなく貴族の請負制で,重要な職掌は複数貴族の合議制であり,軍隊は貴族の私兵や宗教的な花郎(かろう)の集団が中心となっている。この時期の国際関係では,三国間の抗争は小康状態であるが,この間に隋・唐の統一国家が中国に生まれ,朝鮮にも統一の気運が生じていた。…
…その中には法興王と高官のほか,随行した〈作食人〉の名もある。また花郎の名も多くみえ,ここが貴族青年たちの修練の場であったことが知られる。【浜田 耕策】。…
… 東アフリカの年齢階梯制ほど整っていないにしても,年齢集団をもつ部族社会はメラネシア,ミクロネシア,インドネシアの若干の地域,東部インドのアッサム地方やムンダ諸族,ドラビダ系諸族,チベット,ミャンマーの若干,北アメリカの平原インディアンの一部,南アメリカではブラジル奥地のボロロ族などにみられる。日本の周辺では,台湾のインドネシア系高山族(山地民),ミクロネシアのヤップ島,パラオ島に顕著なものがあり,朝鮮では新羅時代の花郎(かろう)(ファラン)とよばれた貴族の青年戦士組織が特異な年齢集団であった。中国では,古くは先秦時代の加冠礼や男子集会所に年齢集団がみられるとする見解がある。…
…五に曰く,殺生に択むあり〉である。臨戦無退と殺生有択を教えた世俗五戒は護国仏教のイデオロギーとなり,弥勒信仰とともに花郎道の精神的基盤となった。この伝統は高麗時代になって《高麗大蔵経》の彫造となって現れた。…
※「花郎」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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