16世紀末、戦国大名の
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山口県萩市・長門(ながと)市で焼造される陶器。桃山時代の天正(てんしょう)~慶長(けいちょう)年間(1573~1615)、萩藩主毛利輝元(てるもと)が、朝鮮半島から帰化した陶工の李勺光(りしゃっこう)・李敬兄弟に御用窯として開窯させたのを発祥とする。萩城下坂下の東郊松本村中之倉(現萩市椿東(ちんとう))に築窯したので、この系列窯を松本萩といい、李敬を陶祖とした。これに対して兄勺光の一族が1653年(承応2)深川(ふかわ)村三之瀬(そうのせ)(現長門市)に分窯した系統を深川萩という。松江重頼(しげより)著『毛吹草(けふきぐさ)』に萩焼の名がみえ、都でもその存在が知られていたことがうかがえる。1663年(寛文3)三輪休雪(みわきゅうせつ)が松本に三輪窯をおこし、松本・深川の二系統が併存して今日に至っている。
初期萩焼窯とされる松本萩の坂窯の発掘では、茶碗(ちゃわん)、茶入、花いけなどの茶陶に加え、大量の日常雑器が出土している。また釉(うわぐすり)にも褐釉(かつゆう)が加わって今日の萩焼とは大きく異なり、唐津(からつ)焼や高取(たかとり)焼と同様に多様な作陶内容を示しており、藩窯でありながら一般庶民向け焼物も生産対象にあったことが推察できる。
防府(ほうふ)で出土する大道土(だいどうつち)を用い、特有の藁(わら)灰質の白濁釉をかけた、茶陶としての作風が樹立したのは江戸前期と思われ、茶人の間では「一楽、二萩……」と賞玩(しょうがん)された。びわ色の釉をかけた茶碗はわびの風情に満ち、使うほどに釉色が変化するところから「萩の七化け」の俗称がある。遺品には三島(みしま)・粉引(こひき)・刷毛目(はけめ)・井戸・熊川(こもがい)などの高麗(こうらい)茶碗を写したものが多く、割高台(わりこうだい)にも特色がある。
[矢部良明]
『林屋晴三編『日本陶磁全集18 萩他』(1978・中央公論社)』▽『『世界陶磁全集7 江戸2』(1980・小学館)』
山口県萩市,長門市の窯で焼造される陶器。萩焼は1604年(慶長9)に入府した萩藩主毛利家の御用窯として,萩城下の東郊松本村中之倉(現,萩市椿東)に,朝鮮から帰化した陶工李勺光(りしやくこう)と李敬によって開かれたといわれている。萩焼の名は1638年(寛永15)著の《毛吹草》にみえ,このころには名産となっていた。地元で松本焼とよばれる松本御用窯の創業後,53年(承応2)に李勺光の子の付人であった蔵崎五郎左衛門が長門市に窯を築いて三之瀬(そうのせ)焼物所,いわゆる深川(ふかわ)萩をはじめ,また松本には63年(寛文3)三輪休雪が三輪窯を興すなど以後この2窯の系統が併存して今日に至っている。いつごろからか判然としないが,防府市で出土する大道土をつかって作陶し,これに萩焼独特のわら灰質の白濁釉をかけ,おもに茶陶を焼いてきた。俗に〈一楽二萩三唐津〉とよばれるように茶陶の声価は高く,遺品もほとんど茶碗でしめられているが,近年発掘調査された松本焼の古窯址からは,茶碗,水指,茶入のほか大量の碗皿,土瓶,油壺などが出土し,伝承のような茶具専窯ではなく,一般什器を生産の重要な器種としていたことが知られた。
執筆者:矢部 良明
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萩藩の陶窯とその製品。萩焼の呼称は現代に始まる。山口県の萩市内の松本焼と長門市深川(ふかわ)湯本の深川焼に大別される。文禄・慶長の役後に招致された李朝の陶工李勺光(りしゃくこう)と李敬によって築窯された。文献では1638年(寛永15)の「毛吹草」に萩の産物としてあげるが,その創始の年代は不明。しかし藩の御雇細工人に坂・三輪・佐伯(林と改姓)・山村の4家が認められる。坂家の坂窯の発掘により,大量の日常飲食器が焼かれたことが判明したが,有名な茶道具については,ほとんど確認されなかった。江戸時代の萩焼の名作については数も少なく,近年,その力作は福岡県の高取焼の作とされる。
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…萩市は近世毛利氏の城下町景観をよく保存し,松下村(しようかそん)塾や萩城跡,伊藤博文旧宅など明治維新期の史跡の多い町である。茶器として全国に知られる萩焼は,萩藩御用窯の伝統を伝えるすぐれた陶芸で,多くの窯元があって,近年は食器,花器,置物など多種の製品がつくられ,山陰の城下町にふさわしい観光産業となっている。県の東端岩国市にある錦帯橋は錦川に架けられたアーチ型5連の木橋で,江戸時代から日本三奇橋の一つとして知られた貴重な文化財であり,錦川の鵜飼いとともに多くの観光客をよんでいる。…
※「萩焼」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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