小児の臀部付近の皮膚が青くみえる状態で,児斑(じはん)または小児斑(しようにはん)ともいう。皮膚の表面は平らで,しこりや隆起はない。通常の発現部位は臀部から背中で,それ以外の部位(腹,四肢,顔面など)に見られるものを異所性蒙古斑という。出生時から存在する場合が多く,遅くとも生後数週間以内に現れる。青い色は2歳頃を頂点として徐々に薄くなり,多くは5~10歳頃に消失するが,成人まで残ることもある。異所性の場合は通常より消えにくい。日本人では,5歳児62%,10歳児6%,成人4%に存在する。色はメラニンによるものであるが,皮膚の深層にあるために青くみえる。発現率は,日本人では95%以上,他のアジア人でも80%以上であるのに対し,ヨーロッパ人では1%未満と大きな差があるために,アジア人(モンゴロイド)固有の特徴とみなされた。しかし,この特徴はそれ自体で独立して遺伝するものではなく,皮膚のメラニンの全般的な量によって決まることが,明治時代末期にドイツで研究を行った足立文太郎によって明らかにされた。蒙古斑の本体は大型のメラニン保有細胞をもつ特別な組織で,真皮中に存在し,一般の皮膚有色組織とは,存在する深さや,有色細胞の形,大きさなどで明確に区別できる。この特別な有色組織は,人類以外の霊長類にもみられるが,成長過程のある期間だけ,しかも,殿部だけに出現するのが人類の特徴で,モンゴロイドだけでなく人類一般に存在する。このようなことから,足立は〈蒙古斑〉でなく〈児斑〉と呼ぶ方が適当であるとした。児斑組織が児斑として発現するか否かは,児斑組織のメラニン量と表皮のメラニン量による。児斑組織のメラニン量が少ないヨーロッパ人,皮膚の表皮のメラニン量が多いアフリカ人とも,児斑組織は体表から見えず,結果としてアジア人特有のようにみえるのである。
執筆者:多賀谷 昭
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
日本人(黄色人種)の
通常型はほとんどが自然に消えるのでそのまま経過をみます。異所性のタイプは成長しても消えにくい場合があり、気になるならレーザー(Qスイッチルビーレーザー、Qスイッチアレキサンドライトレーザー)治療がよいでしょう。
自然経過をみるのが一般的ですが、異所性で見た目が気になる場合はレーザー治療を考え、レーザーを設置している施設で相談してください。
安田 浩
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
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出典 母子衛生研究会「赤ちゃん&子育てインフォ」指導/妊娠編:中林正雄(母子愛育会総合母子保健センター所長)、子育て編:渡辺博(帝京大学医学部附属溝口病院小児科科長)妊娠・子育て用語辞典について 情報
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[色素細胞系の母斑]
青色ないし黒色調を呈する。蒙古斑mongolian spotは新生児,乳児の腰部から仙骨部にみられる灰青色斑で,日本人の場合90%以上に肉眼的に認められる。生下時からみられ,その後ある程度増加し,徐々にうすくなり5~6歳までにほとんど消失する。…
…身長は中等度ないし低い。新生児,幼児の臀部の皮膚に青色の蒙古斑があることが多い。(3)ニグロイド大人種 皮膚は濃褐色ないし赤褐色,黒色で,体毛はわずかである。…
…今日でも,イギリスに移住した西インドの黒人がビタミンD不足で苦しむとか,アフリカに住む白人が日射病にやられやすい,というように皮膚の色の適応的役割は容易に認められる。5歳くらいまでの幼児の尻から背面の下部に青いあざとして現れる児斑(蒙古斑)は,真皮深層にある大型のメラニン細胞に支配される。モンゴロイドのほとんどに現れ,コーカソイドでは一般に0.5%以下,ニグロイドでは表皮のメラニン色素に妨げられて観察できない。…
※「蒙古斑」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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