奈良時代前期の銭貨普及策の一つ。和銅~養老年間(708-724)の銭貨普及諸政策の一環として,711年(和銅4)10月に出された。銭を一定額蓄えた者に,その銭の政府への納入を条件として位を与えるもので,売位制度の一種ともいえる。その骨子は,正六位以上で10貫以上蓄銭したものは勅によって処分し,従六位~八位では10貫以上で1階,20貫以上で2階位を進め,初位では5貫ごとに1階進め,初位から従八位下に入るときには10貫を要することなどである。以上は,対象を有位者のみとするが,同年12月に,無位・白丁が位を得るときにはそれぞれ7貫,10貫を要するという追加法が出されたことにより,対象は有位者に限られなくなった。この法令の実施状況については,同年11月に蓄銭人に初めて位を叙したとみえるのみで,どの程度実施されたかは不明である。しかし,和同開珎の普及の進展とともに,この法令の存在意義は薄れていったであろう。
執筆者:栄原 永遠男
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和銅(わどう)~養老(ようろう)年間(708~724)における銭貨普及のための諸政策の一環として、711年(和銅4)10月に出された法令。一定額の銭を蓄えてこれを政府に納めた者に対して一定の位を与える制度で、売位制度の一種といえる。当初は有位者のみを対象としたが、同年12月に、無位(むい)・白丁(はくてい)から有位者となる際の銭の額を定める追加法が出されて、この制限も取り払われた。同年11月、蓄銭の人に初めて位を叙したことがみえるのが、この法令の実施に関する唯一の例で、現実にどの程度実施されていたかは明らかでないが、和同開珎(わどうかいちん)の普及とともに行われなくなったと考えられる。
[栄原永遠男]
奈良前期の銭貨普及政策。711年(和銅4)10月発布(12月に無位・白丁を対象とする追加法制定)。一定額の銭貨を蓄積した者に,その銭貨を政府へ納入するのと引換えに位階を与えるもので,売位政策の一種である。「続日本紀」同年11月条に,蓄銭人にはじめて位階を与えたとあるのが実施に関する唯一の史料で,どの程度実施されたかは不明。
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…皇朝銭の鋳造地は武蔵・近江・山城・大和・河内・周防・長門の各地であった。律令政府は蓄銭叙位法を定め,銭貨を蓄えた者に対して位階を与えるとか,諸国から政府に上納していた庸・調を銭貨に代えるとか,官吏の禄を銭貨で与えるなど,銭貨の流布を図るために種々の対策を講じたが,律令政府の支配力が衰えるとともに,その鋳銭事業も乾元大宝を最後として打ち切られた。 皇朝銭の鋳造が停止されてから,物品貨幣(自然貨幣)の稲米布帛(とうべいふはく)が再び使用されるようになったが,平安末期から唐の銭貨が日本に流入し,鎌倉時代には宋銭,室町時代には明銭が輸入され,国内で通用した。…
※「蓄銭叙位法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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