(読み)にの

精選版 日本国語大辞典 「蓑」の意味・読み・例文・類語

にの【蓑】

〘名〙 蓑(みの)のこと。〔新撰字鏡(898‐901頃)〕

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デジタル大辞泉 「蓑」の意味・読み・例文・類語

みの【×蓑/×簑】

かやすげなどの茎や葉、また、わらなどを編んで作った雨具。肩からかけて身に着ける。

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改訂新版 世界大百科事典 「蓑」の意味・わかりやすい解説

蓑 (みの)

わら,カヤ,スゲ,シナノキなどの植物の茎や皮,葉などを用いてつくった外被である。雨,雪,日射あるいは着衣が泥や水に汚れるのを防ぐために着用する。古くから農夫,漁夫狩人などが着用した。《日本書紀》には,素戔嗚(すさのお)尊が青草をたばねて蓑笠としたと記してあり,《万葉集》にも見られるほか,12世紀の成立とされる《信貴山縁起絵巻》には,尼公の従者が蓑を着て旅する姿が描かれている。

 蓑の種類は,背蓑肩蓑胴蓑,丸蓑,腰蓑蓑帽子の6種類に分けられるが,一般的に用いる蓑は肩蓑と胴蓑が多い。肩蓑は,両肩から後背部,腰部をおおう。表側は材料が重なりあっているが,裏側は網のように編んである。東北地方ではケラと呼び,雨,雪の日に必要なものであった。またダテゲラという蓑は,海菅(うみすげ)という海草を黒く染めて作るが,とくに首のまわりには各種の色糸を用い,鶴亀,矢羽根,松竹梅などの模様を編みこみ,背部には麻,シナノキの皮を長く垂らして装飾とした。これは農家の婚礼の行列に着用し,祝樽をかつぐのに用いた。胴蓑は両肩から後背部,胴,腰部をすっぽりおおうように作られ,表面はあたかも鳥の羽根のようであった。胴蓑も全国的に広く着用されていた。腰蓑は腰部をすっぽりと前掛け状におおうため,農民の代かき,田植の際の衣服の汚れを防ぐものであった。漁夫もまた用いた。背蓑は小型であるが,背をおおい,もっぱら日よけと物を運搬するときに用いた。セガミノ,ヒミノ,セナカアテなどとも呼ばれる。蓑帽子は帽子つきの蓑のことで,積雪地帯に見られ,東北地方にとくに用いられた。冬季,防寒,防風,防雪のため老若男女,幼児にいたるまで広く着用したが,現在はほとんど消滅した。中世の絵巻には,蓑帽子をつけた狩人など山の民の姿が見られる。
執筆者:

蓑はケダイ,ケラ,バンドリなどとも呼ばれ,雨雪や寒風などから身を守る労働着の一つであると同時に,笠,杖,手甲,脚絆などとともに旅装束の一つでもあった。《日本書紀》には,素戔嗚尊が青草をたばねて,蓑笠としたという話のあとに,蓑をつけたままで他人の家に入ることを忌む習俗について記している。とくに,異界から仮面仮装をしてこの世を訪れる来訪神やマレビトは蓑笠をつけて出現した。逆に,定着農民にとっては蓑笠をつけた者は異人であったから,みだりに自分たちの世界に侵入するのを禁じた。これをつければ,この世の存在とはみなされず,この世と異界の中間状態にある者または異界の者とされ,神聖な物忌みの状態にあるしるしともみられたのである。このため,蓑笠は,正月儀礼,小正月の来訪神行事,婚姻葬式雨乞いや虫送りなどさまざまな民俗儀礼の中で,この世と異界を往来する旅装束の一つとして用いられている。蓑笠をつけて身をやつすことで,この世から異界へ,異界からこの世へ通過する資格が得られたのである。百姓一揆の際に,蓑笠をつける習俗も,この世ならざる存在へと変身するためであったと思われる。赤子がこの世に誕生する際も,胞衣(えな)が一種の象徴的な蓑笠としての役割を果たしていた。蓑笠は身をつつみ隠すことでこの世のものでないことを表したが,昔話の中にも〈隠れ蓑笠〉や〈福蓑〉の話があって蓑が神秘的なものとされていたことがわかる。秋田県の正月の来訪神であるナマハゲも鬼面にわら蓑をつけて出現するが,ナマハゲが落としていったわら蓑のわらしべは福を招く呪物ともされている。
執筆者:

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「蓑」の意味・わかりやすい解説


みの

日本古来の外被の一種。防雨、防雪、防寒、日よけ、運搬の際の背中当てなど、その利用範囲は広い。藁(わら)、菅(すげ)、茅(かや)、科(しな)(シナノキ)、かじ(カジノキ)、しゅろ、そのほか手近にある材料を用いてつくる自家製品である。形としては、東北地方の背中を覆う「ケラ」がもっとも古く、『信貴山縁起(しぎさんえんぎ)』に、そのおもかげを察することができる。これを東北地方では背蓑ともいう。漁村では、多く腰から下に巻く腰蓑は、水を防ぐためのものであり、肩や背を覆う肩蓑、丸く編んだ丸蓑、帽子付きの蓑帽子、背蓑と腰蓑を継いでつくった胴蓑は猿蓑とよぶ地方もある。元来、蓑作りは男の仕事で、東北では若者が嫁を迎えるときの贈り物として、首回りの部分を色糸で矢羽根や吉祥文字を編み込んだものをつくり、嫁からは花婿に、こぎん、菱刺(ひしざし)などの仕事着を贈る地方もある。16世紀、南蛮文化の到来によって、羅紗(らしゃ)製の合羽(かっぱ)が伝えられ、蓑は農山漁村の民具となり、昭和初期まで用いられた。

[遠藤 武]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「蓑」の意味・わかりやすい解説


みの

わら,すげ,あるいはびろうの葉,ふじ,しゅろの皮などを編んでつくった雨具。背蓑,肩蓑,胴蓑,丸蓑,蓑帽子,腰蓑などがある。呼称は地方によってさまざまであるが,蓑が最も一般的。東北地方北部ではケラ,北陸,中部,山形などの地方ではバンドリと呼んでいる。バンドリはハトリ (すずめの方言) の転じたもので,蓑を着た農民の姿がすずめを連想させることからきている。

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百科事典マイペディア 「蓑」の意味・わかりやすい解説

蓑【みの】

雨具の一種。スゲ,わら,シュロなどの茎や葉を編んで作る。肩と腰,または腰のみをおおう小型蓑,全身を包む大型蓑,上下2部形式の蓑などがあり,古来,農山漁村で使用された。ばんどり(主として北陸),けら(東北)ともいう。

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【雨具】より

…雨降りの外出や労働のさい身に着ける外衣,かぶりもの,履物などの総称。蓑,合羽,笠,傘,レインコート,帽子,足駄(高下駄),雨靴などがある。わら,スゲ,海藻などの植物,防水加工を施した紙や布,ゴム,ナイロンなど撥水性のある素材で作られる。…

※「蓑」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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