薬害肝炎問題(読み)やくがいかんえんもんだい

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

薬害肝炎問題
やくがいかんえんもんだい

血液製剤の投与によるC型肝炎の感染被害の問題をいう。日本では血液凝固因子製剤が以前、手術後や出血しやすい病気の治療・予防薬として使われた。その血液製剤がC型肝炎ウイルスに汚染されていたため起きたC型肝炎が「薬害肝炎」とよばれている。問題の製剤は血液凝固第因子のフィブリノーゲン製剤と、血友病治療薬で「薬害エイズ」の原因にもなった第因子製剤である。
 フィブリノーゲン製剤は旧ミドリ十字(現、田辺三菱製薬)が1964年(昭和39)から製造販売しているが、製造工程での添加物や加熱方法の違いで、おもに1985年夏から1987年まで発売の非加熱製剤、1987年以降1994年まで発売の加熱製剤が感染源になった。
 第因子製剤は血友病B型治療用だが、第因子、第因子、第因子なども含んでいる。感染源としては、いずれも非加熱製剤である、旧ミドリ十字がアメリカの買血をもとに1976年から1985年まで製造(販売は1988年ごろまで)していた製剤と、日本製薬が国内買血をもとに1972年から1986年まで製造販売していた製剤が疑われている。
 1986年9月から1987年4月まで青森県三沢市の産婦人科医院で非加熱のフィブリノーゲン製剤を打たれた産婦8人がC型肝炎に集団感染、厚生省(当時)の調査が報道された。1975年、東京地裁が産婦人科医は産婦の出血に血液製剤や輸血で対応すべしとの判決を下して以来、産科ではフィブリノーゲン製剤が広く使われていたことから社会問題になり、その後、第因子製剤にも飛び火した。
 2002年(平成14)10月、患者ら16人が損害賠償を求めて東京地裁、大阪地裁に薬害肝炎訴訟を起こし、福岡、名古屋、仙台と広がった。フィブリノーゲン製剤では2006年6月の大阪地裁はじめ各判決とも一定時期について製薬企業と国の責任を認めた。また、第因子製剤では2007年3月の東京地裁からは企業責任を、2007年7月の名古屋地裁は国の責任も認めるなど判決は分かれた。2007年12月、福田康夫首相が被害者の一斉救済を決断、2008年1月、薬害肝炎の被害者救済法(正式名称は、特定フィブリノゲン製剤及び特定血液凝固第因子製剤によるC型肝炎感染被害者を救済するための給付金の支給に関する特別措置法)が成立し、裁判所の認定で、肝硬変や肝癌(がん)の罹患(りかん)者、死亡者には4000万円、慢性肝炎の罹患者には2000万円などの一時金を企業と国が連帯して支払うことで決着した。
 C型肝炎の多くは輸血や注射などの医療行為による医原病のうえ、免疫グロブリン製剤など他の血液製剤も原因とする指摘もあるが、これらは対象外になっている。[田辺 功]
『フジテレビC型肝炎取材班著『ドキュメント 検証C型肝炎――薬害を放置した国の大罪』(2004・小学館) ▽薬害肝炎全国原告団出版委員会編『薬害肝炎とのたたかい――350万人の願いをかかげて』(2009・桐書房) ▽山口美智子著『いのちの歌――薬害肝炎、たたかいの軌跡』(2010・毎日新聞社) ▽岩澤倫彦・フジテレビ調査報道班著『薬害C型肝炎 女たちの闘い――国が屈服した日』(小学館文庫)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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