「あを(青)」との関係が考えられるが、中国でも青と藍とを区別する。「からあゐ(韓藍)」「くれなゐ(紅・呉藍)」「あぢさゐ(紫陽花)」等の植物名は色の特色から発したもの。「ふたあゐ(二藍)」は「あゐ」と「くれなゐ」との二種をあわせた染色。
青色系統の染色にもっぱら用いられる染料の名。植物性のこの色素の主成分は藍青(らんせい)とインジゴindigoである。インジゴを含む植物は、主として温熱帯地方に産し、世界の各地に少なくとも50種以上はあるといわれ、なかでもインドアイは、もっとも広く分布している。このほかに古くヨーロッパで用いられていたタイセイや、わが国で一般に使用されてきたタデアイ、奄美(あまみ)大島や沖縄のリュウキュウアイなどが知られている。なお青色を出す染料としては、アイのほかに、インジゴを含有しない、かなり多くの植物のあることが知られている。南アメリカの先住民の間で用いられた熱帯アメリカ産のアカネの果実などがそれで、日本ではクサギの実からも薄青い染料が得られるし、古くから摺衣(すりごろも)に用いられたというヤマアイにもインジゴは含まれていない。こうした植物は一括して、偽藍(ぎあい)pseudo indigoともよばれている。
わが国のタデアイは、古くから各地で地アイとして栽培されてきたが、江戸時代に徳島藩がこれを奨励して、阿波(あわ)藍として良質のものがつくり出され、全国に売りさばかれた。栽培は、2~3月に播種(はしゅ)、4~5月に苗を畑に移植する。6~8月ごろ刈り取り、刻んで、乾燥したアイの葉を9月中旬ごろ小屋に積んで寝かせ、水を打って発酵させる。約3か月たって、12月ごろにできあがるのが蒅(すくも)で、これを搗(つ)き固めて藍玉とし、または蒅から水分を除いたものが蒅藍として染料に用いられる。藍玉は2~10%のインジゴを含み、溶かして発酵させると、水に溶けないインジゴが水溶性のインドキシルとなり、染色に使用する「藍液」ができる。
沖縄で行われている方法は、刈り取ったリュウキュウアイを枝ごと大きなタンクに入れ、水を加えて放置する。発酵したら枝や葉を取り出してその液を別のタンクに移し入れ、石灰を加えて攪拌(かくはん)する。沈殿するとその上澄みを捨て、底に残ったペースト状の藍を染料として出荷する。この方法は今日インドでも行われており、これを泥藍(どろあい)と称する。
[山辺知行]
タデ科の1年草アイ(タデアイ)からとった染料,その染色。染料植物には印度藍・琉球藍・菘藍(しょうらん)なども用いた。平安時代頃までは野生の山藍ですった青緑色が藍で,藍染による青色を藍というのは中世以降。藍染では,タデアイから製した蒅(すくも)や泥藍などを藍甕(あいがめ)に仕込み,アルカリ・水・発酵助剤などを加えて加熱し,発酵作用で還元酵素を生じさせ,藍の葉に含まれる青藍を白藍にかえて染液とする。これを藍建(あいだて)という。一般的には浸染(しんぜん)を行い,染色後,空気中で酸化させて藍色を発色させる。浸染の回数により濃さを増し,濃淡によって甕覗き(かめのぞき)・水色・空色・浅葱(あさぎ)・千草・縹(はなだ)・紺・搗(かち)色などと区別される。近世に木綿の普及とともに一般化し,マムシや毒虫・ヒルなどを防ぎ殺菌作用も強いため,野良着や仕事着・産着などの染色に多用された。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
世界貿易史上名高い藍はインドの産物。古来中近東や地中海周辺市場へ輸出され,中世はムスリム商人が,近世に入ってからは喜望峰回りのヨーロッパ商人が,盛んにその取引を行った。18世紀,西インド諸島の奴隷制プランテーションの藍産に圧倒されたが,ベンガルがイギリス植民地となってから,この地の藍プランテーションは国際市場に独占的地歩を築いた。20世紀初め以降,合成染料に駆逐された。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
出典 旺文社日本史事典 三訂版旺文社日本史事典 三訂版について 情報
出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報
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