(読み)アイ

デジタル大辞泉 「藍」の意味・読み・例文・類語

あい〔あゐ〕【藍】

タデ科一年草。高さ50~80センチ。茎は紅紫色で、葉は長楕円形。秋、穂状に赤い小花をつける。葉・茎から藍染めの染料をとり、京都・大坂・阿波が産地として知られた。果実は漢方で解熱・解毒に使う。古く中国から渡来したとされる。たであい。あいたで。 花=秋》「この村に減りし土蔵や―の花/秋郷」
濃青色の天然染料の一。1木藍きあいなどの葉や幹から得られる。インジゴ
藍色あいいろ
[類語]真っ青青色せいしょく青藍せいらん紺青こんじょう紺碧こんぺき群青ぐんじょう瑠璃るりはなだ花色露草色納戸色浅葱あさぎ水色空色ブルーインジゴコバルトシアンウルトラマリンマリンブルースカイブルーターコイズブルー

らん【藍】[漢字項目]

常用漢字] [音]ラン(呉)(漢) [訓]あい
タデ科の草の名。アイ。「出藍
あい色。「藍碧らんぺき藍綬褒章らんじゅほうしょう
梵語の音訳字。「伽藍がらん
[難読]洎夫藍サフラン

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精選版 日本国語大辞典 「藍」の意味・読み・例文・類語

あいあゐ【藍】

  1. 〘 名詞 〙
  2. タデ科の一年草。古くから、葉や茎はインジゴ染料に、種子は漢方で解熱、解毒に用いられる。原産地は中国南部、またはインドシナ半島とされ、日本には中国を経て飛鳥時代にはすでに伝わっていた。現在、徳島、広島などで栽培。高さ約八〇センチメートル。茎は紅紫色。葉は長楕円形で、傷つけると藍色に変わる。秋、赤または白色の多数の小花が穂になって咲く。実は長さ二、三ミリメートルぐらいの黒褐色。蓼藍(たであい・りょうらん)
    1. [初出の実例]「藍 阿井」(出典:新撰字鏡(898‐901頃))
  3. 藍の葉から製する一種の染色材料。インジゴ。製造過程のちがいによって、もみあい、すくも、あいだまなどの別がある。
    1. [初出の実例]「ai(アイ) デ ソムル」(出典:日葡辞書(1603‐04))
  4. あいいろ(藍色)
    1. [初出の実例]「あゐときはだと」(出典:能因本枕(10C終)七二)
  5. あいろう(藍蝋)」の略。

藍の補助注記

「あを(青)」との関係が考えられるが、中国でも青と藍とを区別する。「からあゐ(韓藍)」「くれなゐ(紅・呉藍)」「あぢさゐ(紫陽花)」等の植物名は色の特色から発したもの。「ふたあゐ(二藍)」は「あゐ」と「くれなゐ」との二種をあわせた染色。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「藍」の意味・わかりやすい解説


あい

青色系統の染色にもっぱら用いられる染料の名。植物性のこの色素の主成分は藍青(らんせい)とインジゴindigoである。インジゴを含む植物は、主として温熱帯地方に産し、世界の各地に少なくとも50種以上はあるといわれ、なかでもインドアイは、もっとも広く分布している。このほかに古くヨーロッパで用いられていたタイセイや、わが国で一般に使用されてきたタデアイ、奄美(あまみ)大島や沖縄のリュウキュウアイなどが知られている。なお青色を出す染料としては、アイのほかに、インジゴを含有しない、かなり多くの植物のあることが知られている。南アメリカの先住民の間で用いられた熱帯アメリカ産のアカネの果実などがそれで、日本ではクサギの実からも薄青い染料が得られるし、古くから摺衣(すりごろも)に用いられたというヤマアイにもインジゴは含まれていない。こうした植物は一括して、偽藍(ぎあい)pseudo indigoともよばれている。

 わが国のタデアイは、古くから各地で地アイとして栽培されてきたが、江戸時代に徳島藩がこれを奨励して、阿波(あわ)藍として良質のものがつくり出され、全国に売りさばかれた。栽培は、2~3月に播種(はしゅ)、4~5月に苗を畑に移植する。6~8月ごろ刈り取り、刻んで、乾燥したアイの葉を9月中旬ごろ小屋に積んで寝かせ、水を打って発酵させる。約3か月たって、12月ごろにできあがるのが蒅(すくも)で、これを搗(つ)き固めて藍玉とし、または蒅から水分を除いたものが蒅藍として染料に用いられる。藍玉は2~10%のインジゴを含み、溶かして発酵させると、水に溶けないインジゴが水溶性のインドキシルとなり、染色に使用する「藍液」ができる。

 沖縄で行われている方法は、刈り取ったリュウキュウアイを枝ごと大きなタンクに入れ、水を加えて放置する。発酵したら枝や葉を取り出してその液を別のタンクに移し入れ、石灰を加えて攪拌(かくはん)する。沈殿するとその上澄みを捨て、底に残ったペースト状の藍を染料として出荷する。この方法は今日インドでも行われており、これを泥藍(どろあい)と称する。

山辺知行


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山川 日本史小辞典 改訂新版 「藍」の解説


あい

タデ科の1年草アイ(タデアイ)からとった染料,その染色。染料植物には印度藍・琉球藍・菘藍(しょうらん)なども用いた。平安時代頃までは野生の山藍ですった青緑色が藍で,藍染による青色を藍というのは中世以降。藍染では,タデアイから製した蒅(すくも)や泥藍などを藍甕(あいがめ)に仕込み,アルカリ・水・発酵助剤などを加えて加熱し,発酵作用で還元酵素を生じさせ,藍の葉に含まれる青藍を白藍にかえて染液とする。これを藍建(あいだて)という。一般的には浸染(しんぜん)を行い,染色後,空気中で酸化させて藍色を発色させる。浸染の回数により濃さを増し,濃淡によって甕覗き(かめのぞき)・水色・空色・浅葱(あさぎ)・千草・縹(はなだ)・紺・搗(かち)色などと区別される。近世に木綿の普及とともに一般化し,マムシや毒虫・ヒルなどを防ぎ殺菌作用も強いため,野良着や仕事着・産着などの染色に多用された。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「藍」の解説

藍(あい)

世界貿易史上名高い藍はインドの産物。古来中近東や地中海周辺市場へ輸出され,中世はムスリム商人が,近世に入ってからは喜望峰回りのヨーロッパ商人が,盛んにその取引を行った。18世紀,西インド諸島奴隷制プランテーションの藍産に圧倒されたが,ベンガルがイギリス植民地となってから,この地の藍プランテーションは国際市場に独占的地歩を築いた。20世紀初め以降,合成染料に駆逐された。

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旺文社日本史事典 三訂版 「藍」の解説


あい

藍色の植物染料
古来染料として利用され,山城国(京都府)・摂津国(大阪府)が主産地であったが,江戸時代に阿波国(徳島県)から大量に産出。色があせず布質の耐久性を増すため,庶民用作業衣などの染料として普及。植物の藍は四木三草の一つにあげられた。19世紀末ころから,鉱物性藍染料の利用により栽培が激減した。

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動植物名よみかた辞典 普及版 「藍」の解説

藍 (アイ)

学名:Polygonum tinctorium
植物。タデ科の一年草,園芸植物,薬用植物

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