平安中期の公卿。父は参議斉敏。祖父実頼の養子となり,小野宮第など多くの資産を伝領,また故実に関する家説を継承した。後小野宮と称せられる。969年(安和2)元服,叙爵。以後右兵衛佐,右近衛少将等を歴任,981年(天元4)蔵人頭。翌年遵子(頼忠女)立后の際中宮亮を兼任。983年(永観1)左近衛中将。翌年円融天皇譲位,引き続き新帝(花山天皇)の蔵人頭。985年(寛和1)一条天皇受禅の際蔵人頭をやめたが,987年(永延1)再補。989年(永祚1)参議,995年(長徳1)権中納言(翌年転正),1001年(長保3)権大納言(09年転正)と昇進,兼官も左兵衛督,右衛門督,右大将と進み,その間太皇太后宮大夫や検非違使別当も務めた。また仏教信仰に厚く小野宮第にりっぱな御堂を造っている。富裕であった彼はこの邸宅にはしばしば造作を加えた。九条流の道長の勢威に対し,小野宮の主流としての誇りを保ち,道長も彼に一目置いていた。三条天皇の女御娍子(済時女)立后の際は道長の妨害に屈せず,儀式を主宰した。後一条朝には一段と重きを加え,賀茂社行幸など重要な行事を主宰した。21年(治安1)右大臣,37年(長暦1)従一位。男子はなく兄懐平の子の資平を後継者としたが,資産は女子一人に譲与した。日記《小右記(しようゆうき)》は982-1032年にわたり現存。儀式などの記事は詳細で,政治や世相に対する批判も多くみられ,摂関政治最盛期のとくに重要な史料である。
執筆者:黒板 伸夫
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平安中期の公卿(くぎょう)。参議斉敏(ただとし)の三男。母は播磨守(はりまのかみ)藤原尹文の女(むすめ)。祖父実頼(さねより)の養子となり、本邸の小野宮(おののみや)ほかの莫大(ばくだい)な財産を継ぎ、後小野宮殿(のちのおののみやどの)などとよばれた。981年(天元4)蔵人頭(くろうどのとう)となり、参議、中納言(ちゅうなごん)、大納言を経て1021年(治安1)右大臣、37年(長暦1)従(じゅ)一位に上り、寛徳(かんとく)3年正月18日没した。頭がよく賢人右府とよばれ、祖父以来の伝統を継承して有職故実(ゆうそくこじつ)に詳しく、『続本朝往生伝(ぞくほんちょうおうじょうでん)』には一条朝の秀(すぐ)れた公卿の筆頭にあげられている。藤原道長(みちなが)全盛期にあって、実頼に始まる小野宮家の嫡流として、実頼の弟師輔(もろすけ)の孫である道長と対等の意識をもち、安易に迎合しなかった。ただし道長その人と対立するのではなく、1012年(長和1)の道長による三条天皇女御(にょうご)娍子(せいし)の立后妨害のような横車には対抗するという、朝廷を重んじて筋を通す考え方であった。日記『小右記(しょうゆうき)』、有職故実書『小野宮年中行事』を残した。
[吉田早苗]
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957~1046.1.18
後小野宮(のちのおののみや)・賢人右府とも。平安中期の公卿。父は斉敏(ただとし)。祖父実頼の養子となり,小野宮嫡流として豊富な財産と儀礼を継ぐ。969年(安和2)元服し,従五位下。円融・花山・一条天皇3代の蔵人頭を勤め,989年(永祚元)参議。のち右近衛大将を兼ねる。1021年(治安元)右大臣に至り,90歳の死去まで在任。この間37年(長暦元)従一位。政務に明るく,また藤原道長に批判的だった。日記「小右記」,儀式書「小野宮年中行事」。
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…その後,摂関藤原実頼の領するところとなり,このため実頼の系統を小野宮家と称し,九条家(流)と対比された。実頼からこの家を伝領したのは養子(実は孫)の藤原実資(さねすけ)であった。実資の日記《小右記》に,この邸のことが散見し,いかに造作に意を用いているかがわかる。…
…1巻。著者は藤原実資。実頼(実資の養父)と師輔の兄弟は,父忠平の教命を受けて,それぞれ小野宮流,九条流の有職を確立した。…
…右大臣藤原実資(さねすけ)の日記。祖父実頼が小野宮と称したのに対して実資は後小野宮と称し,右大臣であったことから《小右記》という。…
…その引用書の種類は,現存25巻のものだけでも100を超えるが,その大半は現存しない逸書である。本書の成るについては,同時代の政治家で儀式典礼についても一流派(小野宮流)をなした藤原実資(さねすけ)の依頼によるともいわれる。古写本に前田尊経閣所蔵の金沢文庫本3巻がある。…
※「藤原実資」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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