蘆屋道満(読み)アシヤドウマン

デジタル大辞泉 「蘆屋道満」の意味・読み・例文・類語

あしや‐どうまん〔‐ダウマン〕【蘆屋道満】

平安中期の陰陽家藤原道長ころ安倍晴明法力を争ったと宇治拾遺物語にある。生没年未詳。

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精選版 日本国語大辞典 「蘆屋道満」の意味・読み・例文・類語

あしや‐どうまん【蘆屋道満】

  1. 平安時代一条天皇の頃の陰陽家。安倍晴明と陰陽の術を争ったが、藤原道長を呪詛(じゅそ)し晴明に破れたため播磨国兵庫県)に放逐されたと伝えられる。のちに浄瑠璃蘆屋道満大内鑑」などに脚色された。生没年不詳。

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改訂新版 世界大百科事典 「蘆屋道満」の意味・わかりやすい解説

蘆屋道満 (あしやどうまん)

平安中期の法師陰陽師道摩ともいう。安倍晴明と術くらべする人物として登場することが多い。《古事談》《宇治拾遺物語》《十訓抄》に,道摩法師が藤原顕光の命で藤原道長に妖術をしかけるが,道長の犬と晴明に見破られ,本国播磨国に追放されたと伝える。《峯相記》《東斎随筆》に同じ説話が見え,道摩を道満に作る。《簠簋袖裡(ほきしゆうり)伝》(室町末ごろ写,竜門文庫蔵),《簠簋抄》(1629)に,道満は晴明と術くらべをして敗れ,晴明の弟子となる。のち晴明の入唐中,その妻利花と通じて秘蔵の卜占の書《金烏玉兎(きんうぎよくと)集》を写し取り,帰朝した晴明の首を斬る。術を用いてこれを知った晴明の師,大唐荆山の伯道上人は,来朝して晴明の遺骨を集め生活(しようかつ)続命の法を修して蘇生させ,道満の首を斬り,利花をも殺す。古浄瑠璃信田(しのだ)妻》は,晴明・道満伝説を脚色したものであるが,道満を蘆屋宿禰の後裔とし,宿禰以来,法道仙人の法術を伝えたとする。道満の生国は,《簠簋抄》に薩摩国とする以外は,すべて播磨国とし,《峯相記》は同国佐用郡の奥に住し,後裔は英賀(あが)・三宅にあってその芸を継ぐとする。今日でも三宅(姫路市飾磨区)には蘆屋塚があって,道満の末孫を称する者がいて,もと佐用郡仁方村に住したが,のちこの地に移住したと伝える。古記録によれば,この地には赤松満祐に薬を与えた蘆屋道薫をはじめ,室町期に活躍した蘆屋道仙・道善・道軒・道海などが住したことが確認できる。中古以来の説話集にも智徳をはじめとして,播磨陰陽師,播磨相人などの活躍がみられるところから賀茂,安倍2氏とは別系の陰陽師の拠点であったと考えられている。京の道満の居所は《古事談》などに六条坊門万里小路とあるが,江戸期の地誌類では大宮通三条の南にあったとする(《京羽二重織留》《雍州府志》《和漢三才図会》など)。また日本の各地に蘆屋塚・道満塚・道満井戸など,その伝説を伝えるところが多く,大和生駒郡安堵村飽波,近江国犬上郡北青柳村長曾根などは道満を非人の祖と伝え,若狭国では八百比丘尼の父を道満とする伝説があり,武蔵・会津などでもさまざまな伝説がある。
執筆者: 道満は人形浄瑠璃歌舞伎でも活躍する。《信田森女占(しのだのもりおんなうらかた)》(1713初演)においては,一条戻橋で待ち伏せた道満は,保名・晴明の親子を討ち取ろうとするが,逆にとらえられて首をはねられることになっている。さらに,〈信田妻〉系統の歌舞伎狂言の代表作で,《葛の葉》の名で知られる《蘆屋道満大内鑑(おおうちかがみ)》(竹田出雲作,1734初演)における道満は,はじめ道満(みちたる)の名で,安倍保名のライバルとして登場するが,三段目で発心剃髪して,道満(どうまん)と称し,陰陽道に専心することになる。四段目では,狐葛の葉と保名との間に生まれた童子と問答をし,その聡明さに感心して,童子を晴明と名づける人物として描かれている。
執筆者:

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朝日日本歴史人物事典 「蘆屋道満」の解説

蘆屋道満

架空の人物。平安時代に活躍したとされる法師陰陽師。道摩ともいう。『古事談』『宇治拾遺物語』『十訓抄』『峯相記』などに道満の説話がみえ,全国各地に様々な伝説を残す。蘆屋道満を有名にしたのは,信田妻の伝説を集成して脚色した浄瑠璃作者・竹田出雲(初代)作の義太夫で,のちに「葛の葉」として歌舞伎化された「蘆屋道満大内鑑」によるところが大きい。説話のなかでは陰陽師の安倍晴明と術競べをする人物として登場することが多い。『今昔物語集』では,安倍清明と術競べをして敗れ,弟子入りする播磨国(兵庫県)出身の法師の智徳の名がみえるが,道満にかかわる伝説は播磨に多く残り,室町期には蘆屋道薫,同道仙,同道善など陰陽師の居住が播磨で知られ,これは近世にも受け継がれた。播磨の陰陽師たちにとって,中央の陰陽師である安倍,賀茂両氏とは別系の由緒を語る人物として道満の名が取り上げられ,伝承されていったのであろう。また,道満をもうひとりの播磨の伝説的な宗教者・法道仙人とも結びつけ,道満を法道の弟子とする伝承ができあがっている。各地の民俗宗教の事例のなかで,星型の呪符をドーマン符と呼ぶ例があり,志摩地方(三重県)などでは九字を描いたセーマン符(晴明判)とともに,門口の魔除けや海女のお守りとして使用されている。<参考文献>田中久夫「法道仙人と播磨の陰陽師」(村山修一他編『陰陽道叢書』2巻)

(脊古真哉)

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「蘆屋道満」の解説

蘆屋道満 あしや-どうまん

平安時代中期の伝説上の陰陽師(おんようじ)。
藤原道長に呪いをかけて安倍晴明(せいめい)にみやぶられ追放されたといい,また晴明と術くらべをして敗れ弟子となり,のちそむいたともされる。この話は「古事談」「宇治拾遺(うじしゅうい)物語」「十訓(じっきん)抄」などにみえ,浄瑠璃(じょうるり),歌舞伎などに脚色された。名は道摩とも。

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世界大百科事典(旧版)内の蘆屋道満の言及

【蘆屋道満大内鑑】より

…異類婚姻譚として著名な信田妻(しのだづま)の伝承は17世紀後半からしばしば人形浄瑠璃や歌舞伎に取り上げられていたが,本作はそれらを集大成した作品。秘伝書《金烏玉兎集(きんうぎよくとしゆう)》をめぐる安倍保名(やすな)と蘆屋道満との対立を主筋とし,保名に助けられた白狐が許婚葛の葉姫の姿を借りて契りを交わし一子を儲けるという安倍晴明の出生譚を絡めたもの。竹本大和掾の風を伝える四段目口の〈葛の葉子別れの段〉がもっぱら上演されてきた。…

【信田妻】より

…五説経(説経節の五つの代表作)の一つに数えられるが,説経節正本の所在不明。陰陽師安倍晴明の出生にまつわる話と,蘆屋道満(あしやどうまん)との術くらべの話からなる。命を助けられた狐が人に姿を変えて安倍保名と契り子を生む。…

※「蘆屋道満」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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