虎穴に入らずんば虎児を得ず(読み)こけつにいらずんばこじをえず

故事成語を知る辞典 の解説

虎穴に入らずんば虎児を得ず

大きな成果を得るためには、身の危険を冒すことも必要だというたとえ。

[使用例] 虎穴に入らずんば虎子を得ずとけっしたる班将軍が壮志、今やこの正直一図の壮年に顕われ[宮崎湖処子*空屋|1889]

[使用例] そりゃ、スパイの当然の任務さ。虎穴に入らずんば、虎児を得ず[三浦朱門セルロイドの塔|1959]

[由来] 「後漢書はんちょう伝」に登場する、武将班超の名ゼリフ。一世紀、後漢王朝の時代の中国でのこと。西方の異民族の国に使節として派遣された班超は、敵対する別の異民族の使節が、多数の兵士を連れて来ているのと鉢合わせします。身の危険を感じた彼は、夜陰にまぎれて敵を不意打ちすることを決意。そのときに仲間たちに向かって告げたのが、「虎穴に入らずんばを得ず(虎が住むほら穴に入らなければ、その中にいる虎の子を手に入れることはできない)」。そう言ってみんなを発憤させた結果、敵を打ち破ることに成功、班超は西方諸民族を平定した英雄となったのでした。

[解説] ❶虎はその子を非常に大事に守り育てるところから、「虎の子」は、とても価値の高いもののたとえとして使われます。なお、原文では「虎子」ですが、現在の日本語では、「虎児」の形で使うのが一般的です。❷そのまま意訳すれば、「危険を冒さないと、大きな手柄は立てられない」となりますが、班超が伝えたかったのは、「ここで危険を冒して行動すれば、きっと大きな手柄を立てられる」ということだったでしょう。現在でも、思い切った行動を促す場合に使われます。トラに殺されてしまう可能性があるわけですから、危険が大きければ大きいほど、効果的な表現になります。

出典 故事成語を知る辞典故事成語を知る辞典について 情報

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