中国古代に使用された全長約10cmあるいはそれ以上の割符(わりふ)で,左右に分かれていて合わせると,伏した虎の形をしたところから虎符と称せられ,軍を発するのに使用した。すなわち,左半分は中央に蔵し,右半分は郡国の太守,相が持ち,郡兵動員の際,中央より派遣された使者が,太守と合符して初めて郡兵を発することになるが,これは郡国側に出発命令の伝達者の真実性を証明するものであった。一般に青銅でつくられ,金銀象嵌の篆書で,腹から背にかけて,軍の動員,兵役に関する郡国,軍名などが書かれている。《説文解字》によれば,発兵のしるしの瑞玉(ずいぎよく)に,虎の形に刻んだ〈琥(こ)〉があったことがわかり,銅であろうと玉であろうと,すべて虎と関係するのは,威武を表す意味であるといわれる。青銅製の虎符は戦国時代から魏晋南北朝,隋にかけてみられる。
秦の陽陵虎符には,左右同文で〈甲兵之符,右在皇帝,左在陽陵〉と刻されている。戦国時代末期に秦国が魏国と戦ったときに使用したと思われる新(しんせい)虎符では,虎の背に4行にわたって金象嵌で,〈甲兵之符,右在王,左在新,凡興士被甲,用兵五十人以上,必会王符,乃敢行之,燔燧事,雖母(毋)会符,行殹(也)〉とあって,当時の制度をうかがい知ることができる。漢代になると,ほぼ同じようであるが,泗水王虎符,長沙太守虎符などでは,背の文字が1行で,左右に分かれて半字ずつになっている。隋代のものは,虎の姿が貧弱になり,文字も多くは外面,内面とに書き,半字にはなっていない。唐代には魚符が用いられた。
執筆者:杉本 憲司
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
…とくに西域や南海に赴任する場合は,旅立ちが永遠の別離ともなり,その送行にあたっては知人友人が餞別の宴を設けて見送り,これは詩歌の好題になるとともに,士大夫階級の風俗の一つとなった。 主要な道路には一定区間ごとに駅館や郵亭が置かれ,官吏の旅行においては一定の証明証(符信,虎符,符節などと呼ばれた)を所有して,これらの施設やそこに置かれた車馬や役夫を利用することができた。その利用は官職によって差があり,唐の律令には細かい規定がみえる。…
※「虎符」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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