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虫垂炎(虫垂突起炎)/盲腸炎 ちゅうすいえんちゅうすいとっきえんもうちょうえん Appendicitis

翻訳|Appendicitis

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家庭医学館の解説

ちゅうすいえんちゅうすいとっきえんもうちょうえん【虫垂炎(虫垂突起炎)/盲腸炎 Appendicitis】

◎虫垂の炎症で、症状はさまざま
[どんな病気か]
◎同症状の他疾患との鑑別が必要
[症状]
[受診する科]
[原因]
[検査と診断]
◎症状の程度で治療も異なる
[治療]

[どんな病気か]
 虫垂は右下腹部にあります。小腸(しょうちょう)が大腸に移行する部分を回盲弁(かいもうべん)といいますが、この部分より下のほうが盲端(もうたん)(先端が閉じた状態)になっているので盲腸と呼ばれます。この先端から細い突起が出ているのが虫垂(ちゅうすい)(虫垂突起(ちゅうすいとっき))です。(図「虫垂の位置」
 虫垂突起は人体では何のはたらきもしていません。この虫垂になんらかの原因で炎症がおこったものを虫垂炎(ちゅうすいえん)といいます。虫垂炎が盲腸におよんだものを盲腸炎といいます。
 虫垂炎は子どもからお年寄りまで広くおこりうる病気です。女性よりは男性に、10~30歳の間にもっとも多くみられ、10歳以下の幼児や高齢者には少ないとされています。
 虫垂炎は虫垂を摘出すれば治りますが、症状は軽いものから重いものまでさまざまで、医師の診断能力が問われる病気です。軽いものは経過をみることもありますが、それで治ったものがはたして虫垂炎であったかどうかは医師にもわかりかねることがあるのです。
 典型的な症状を示す場合は早急に手術を実施します。重症では穿孔性(せんこうせい)の腹膜炎(ふくまくえん)となるため、メスを入れる範囲を大きくする必要が出てきます。また、ほかの疾患を否定できないときは、正中(せいちゅう)(腹部の真ん中の縦方向)で開腹することもあります。
 抗生物質が発達してきたため、外来で経過をみた例のなかには、周囲の癒着(ゆちゃく)や膿瘍(のうよう)ができてしまい、手術が複雑になるものもあります。また、手術後に癒着性の腸閉塞(ちょうへいそく)がおこることもあります。膿(うみ)などを排除するためのやわらかいチューブドレーンという)をしばらく入れておくこともあります。
■子どもの虫垂炎
 一般に乳幼児は虫垂の開口部がラッパ状に広いので内容の排泄(はいせつ)がよく、虫垂炎は少ないとされています。しかし、かぜなどの症状と思って小児科にかかっているうちに腹膜炎となっていたりする診断のむずかしい症例もよくあります。子どもの場合にも入院経過観察が安全といえます。
■お年寄りの虫垂炎
 症状がはっきりせず、白血球増多(はっけっきゅうぞうた)や発熱もあまりみられません。ただし、腫瘤(しゅりゅう)ができるため、がんとの鑑別が必要です(症状参照)。
■妊娠時の虫垂炎
 妊娠の時期により、虫垂の位置が高くなることを考慮して診断されます。また、大網(たいもう)という腹部の脂肪膜(しぼうまく)では炎症が囲まれにくいため、腹膜炎になることも多いといわれます。妊娠初期は流産に注意しなければなりません。婦人科とよく連絡をとって対応します。妊娠中も手術できます。
■慢性虫垂炎(まんせいちゅうすいえん)
 右下腹部の軽い痛みが慢性に持続する場合、俗に慢性虫垂炎といいますが、外科的にこの病気を確認することはほとんどありません。ほかの疾患を考えるべきでしょう。

[症状]
 定まった症状はありませんが、心窩部(しんかぶ)(みぞおち)の痛みから始まることがよくみられます。徐々に右下腹部に痛みがかぎられるようになり、吐(は)き気(け)や嘔吐(おうと)がおこります。
 ほかの初期の症状は微熱程度で、はっきりした診断がつけられないことがありますが、痛みが持続してがまんできない状態になると受診することになります。このころには、炎症のために腸がまひして、排ガス、排便がみられなくなります。この時期に受診すると、白血球の数が正常(1mm3あたり約5000個)よりも多くなり、1万~1万5000個になっています。そして、右下腹部に強い圧痛、筋性防御(きんせいぼうぎょ)(手で圧迫しようとすると、腹壁をかたくしてしまう反射)がみられるため、容易に診断がつきます。
 もっとも多い圧痛点は臍(へそ)と右腸骨の前上棘(ぜんじょうきょく)(腰骨(こしぼね)が前に飛び出した部分)を結ぶ線を3等分して右側3分の1にあたる部分(マクバーネイ点)です。
 腹膜炎などを併発しているときは38~39℃の高熱が出て、臍周囲から下腹部全体に腹痛が強くみられ、触診でも腹壁は板状にかたくなります。ここで、同じ症状をおこす大腸憩室炎(だいちょうけいしつえん)、移動性盲腸(いどうせいもうちょう)(コラム移動性盲腸」)、付属器炎、腸間膜(ちょうかんまく)リンパ節炎(せつえん)、子宮外妊娠(しきゅうがいにんしん)など、ほかの疾患との鑑別診断が必要です。
 また、症状が緩慢(かんまん)で診断がつかない初期の段階で抗生物質などが使われて症状が隠れてしまい、触診して腫瘤(しゅりゅう)を触知し、緊急に開腹手術される場合があります。これは、虫垂の周囲に膿瘍ができ、小腸、大網(たいもう)(腹部の脂肪膜)などでおおわれているものです。お年寄りではよく慢性化するため、大腸がんとの鑑別が問題となります。

[受診する科]
 医学情報に触れる機会が増えたため、右下腹部が痛ければ、本人も家族も虫垂炎(盲腸炎)を心配して外科医を受診することが多くなりました。ただし、症状が軽いうちは心窩部痛で内科を受診することもよくあり、胃のX線検査でバリウムを飲まされて悪化することもあるので注意が必要です。また、訴えたい内容を正しく医師に伝えることがたいせつです。女性は、付属器炎など婦人科の病気を念頭におく必要もあります。

[原因]
 細菌(多くは大腸菌(だいちょうきん)などの腸内細菌)あるいはウイルスが虫垂に感染しておこるとされていますが、虫垂がなんらかの原因で閉塞(へいそく)していることがかなりの頻度でみられます。閉塞の原因は糞石(ふんせき)(粘液に含まれるリン酸石灰が固まって虫垂の末端にたまったもの)、検査で使うバリウム、植物の種子などといわれています。
 暴飲暴食などの不摂生、かぜ、便秘、胃腸炎などが誘因となります。

[検査と診断]
 心窩部痛(しんかぶつう)と右下腹部痛で受診したとき、どのような検査を受けるかを述べてみましょう。
 問診 いつごろからどのような痛みが始まったか、痛みが持続して徐々に強くなってきているかなどが確認されます。
 腹部触診 右下腹部に強い圧痛があるかがチェックされます。腹膜刺激症状といって、腹部に触れると腹壁をかたくしてしまう反射があると、ほぼまちがいありません。ときにはダグラス窩(か)(図「ダグラス窩の位置」)という腹腔(ふくくう)の底に膿(うみ)がたまっていることがあります。肛門指診(こうもんししん)(肛門から指を入れて調べる)でダグラス窩に痛みの訴えがあれば診断に役立ちます。
 血液検査 白血球数が調べられます。CRP(C反応性たんぱく)という炎症の指標も検査されます。
 尿検査 他疾患との鑑別に必要です。
 腹部X線検査 腸のまひの状態と、虫垂内の糞石の有無を調べます。
 腹部超音波検査 肥厚(ひこう)した虫垂を確認するとともに、周囲の膿瘍の状態を把握するために行なわれます。

[治療]
 すぐに手術をすべきか、経過をみながら判断する必要のある例もあります。そのため、症状がある程度そろっているときはまず入院し、前述した検査の結果と医師の診断によって手術の適否が決定されます。
 保存的に経過をみる場合は飲食が禁止され、抗生物質などが使用され、経過が厳重に観察されます。自覚症状が強くなり、血液検査の異常や腹部触診所見で悪化徴候が確認されたら、開腹手術が実施されます。
●手術治療
 通常は腰椎麻酔(ようついますい)で行なわれます。炎症が軽度で周囲との癒着がなければ短時間ですみます。手術の難易度は、病状だけではなく、肥満も関係しています。一概にはいえませんが、やせている人の手術は比較的安全です。
 腹膜炎の程度がひどいときや、癒着が高度で、メスで開腹する範囲が広くなる場合は、気管内挿管による全身麻酔が必要です。そのため、なるべく全身麻酔が可能であるような施設で手術を受けたほうが安全です。
 子どもの場合は腹膜炎をおこしている例が多いため、全身麻酔できる設備や体制が整った施設を選びましょう。
●術後の養生
 腰椎麻酔の後遺症である頭痛などがなければ、早期に離床し、腸の動きを促進します。通常は1週間程度で抜糸(ばっし)し、退院できます。
 退院後は食事などはふつうにとってかまいませんが、運動はしばらく控えるほうが安全です。
●術後の後遺症
 小腸が創(そう)に癒着しておこる腸閉塞(ちょうへいそく)などがいろいろな時期におこる可能性があります。また、腹壁が化膿(かのう)することもあります。このような場合は、なるべく手術してもらった医師にみてもらうほうがよいでしょう。

出典|小学館
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