ことわざを知る辞典 「袖振り合うも他生の縁」の解説
袖振り合うも他生の縁
[使用例] 親鸞 十五年前に私が常陸の国を
同行二 因縁と申すものは不思議なもので御座いますな。
僧一 袖の振り合いも他生の縁とか申します。
僧二 こうして皆様と半日を一緒に温かく話すのでも、縁なくば許される事ではありませんね[倉田百三*出家とその弟子|1916~17]
[使用例] そで振り合うも他生の縁というが、行きずりにふと知り合った人たちの話にも教えられることは多かった。だから、私の歌はまさに社会的所産であり時代の産物なのである[古賀政男*私の履歴書|1973]
[解説] 「袖振り合う」は、別れを惜しんで互いに袖を振るのではなく、人と人がふれあう、あるいはすれ違う意です。「袖の振り合わせも…」、「袖擦り合うも…」とも言いますが、ことわざの意味は変わりません。「他生」は現世を基点に前世、来世をさし、ここでは前世のことです。「多生」と書く場合は、六道の間で何度も生まれ変わることを意味します。これに続けて「つまずく石も縁の端」ということもよくありました。
日本の文化が仏教の影響を深く受けてきたことをあらためて感じさせる表現ですが、今日では、仏教的な深い意味は特に意識せず、これも何かのご縁というぐらいの軽い気持ちで使われることが多いといえるでしょう。
出典 ことわざを知る辞典ことわざを知る辞典について 情報