湿潤冷温帯の落葉広葉樹林ないしは落葉広葉樹と常緑針葉樹の混合林下に生成する成帯性土壌型。E.ラマンによって最初にその存在が明らかにされた(1905)。アメリカの土壌分類体系《Soil Taxonomy》(1975)におけるディストロクレプトあるいはユートロクレプトに相当する。
湿潤亜寒帯の針葉樹林下の場合とちがって,土壌温度や土壌水分が好適なことと広葉樹の落葉がカルシウムやマグネシウムなどの塩基類に富んでいるため,土壌微生物や土壌動物が盛んに活動して落葉落枝を急速に分解するとともに無機物とよく混合するので,表層には団粒構造のよく発達した暗色のあまり厚くないムル型の腐植層(A1層)が形成されている。その下には亜角塊状または角塊状構造の発達した,酸化鉄で褐色に着色された厚い(B)層(カンビック層ともいう)があり,さらに母材の層(C層)へとつづいている。鉄やアルミニウムの酸化物は腐植や粘土と結合して凝集しているためにほとんど移動しないのでA1層と(B)層の境界が不めいりょうなのが特徴である。風化作用はかなり進行して盛んに粘土が生成されており,主としてイライトやバーミキュライトなどの2:1型粘土鉱物が含まれている。しかし表層から下層への粘土の移動集積は生じていない。
褐色森林土の化学的性質はかなり変化に富み,反応は強酸性から微酸性までかなりの幅がある。フリードランドV.M.Fridlandは典型的(塩基飽和),塩基未飽和,ポドゾル化,残炭酸塩質の4亜型に細分した(1953)。日本では北海道南部,東北地方などのブナ林地帯に広く分布し,いずれも塩基未飽和亜型に属し,酸性褐色森林土ともいう。大政正隆は日本の褐色森林土を水分状況により乾性(BA,BB),弱乾性(BC),適潤性(BD),弱湿性(BE),湿性(BF)の6ファミリーに区分し(1951),国有林土壌調査ではこの分類が用いられる。
執筆者:永塚 鎮男
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温帯湿潤地方の広葉樹林下に広く生成している土壌。成帯性土壌(気候型土壌)の一種である。2~3センチメートルの落葉層の下に腐植を含む黒褐色のA層(表土)と酸化鉄に富む褐色のB層(下層土)が続き、その下はC層(母材)で、その地質岩石的起源は特定ではない。分布範囲は大陸内部の乾燥地を除く中緯度(亜寒帯から温帯まで)と広く、中部ヨーロッパ、アメリカ合衆国北東部、中国東北部から日本にかけての諸地域に顕著である。温帯多雨という気候の影響でカルシウムがほとんど土層から溶脱しているが、鉄、アルミニウムは移動集積をおこしてはいない。日本では平野部に火山灰層が卓越し、アンドソルが生ずるので褐色森林土は主として山地斜面に生成しており、またヨーロッパやアメリカよりも降水量が多いのでカルシウムのみならず塩基類の溶脱がより激しく、酸性の強い型になっている。隣接の高緯度側(および山地の高所側)に向かって、ポドゾルに移行し、同時に混交林から針葉樹林帯に変わってゆく。低緯度側へは、中間型の黄褐色森林土の分布域を経て赤黄色土帯に変わる。
[浅海重夫・渡邊眞紀子]
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…気候の乾湿,寒暖は森林の形成,その種類ならびに森林土壌の特徴をも決定するほどの大きな影響力をもつ。日本の森林土壌のおもな種類は北海道のエゾマツ,トドマツ林下や本州高山地のハイマツ林下のポドゾル,ブナ林下の褐色森林土,シイ林下の黄褐色土,タブ林下の赤色土などである。このうち褐色森林土は日本の森林土壌の大部分を占め,乾湿の差により乾性褐色森林土,湿性褐色森林土などに細分されている。…
…日本でも北海道の台地・丘陵上にこの種の土壌型の分布が認められている。(3)冷温帯の土壌型 湿潤冷温帯の落葉広葉樹林帯を特徴づけているのは褐色森林土である。褐色森林土では微生物や土壌動物の活発な働きによって,落葉は急速に分解されて無機物とよく混合されるので,細かい粒状構造が発達した肥沃な暗色の表土(A1層)が形成されている。…
※「褐色森林土」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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