インド北東部の州。面積8万8752km2,人口8017万6197(2001)。州都はコルカタ(旧カルカッタ)。1947年のインド・パキスタン分離独立に際し,英領ベンガル州のうちヒンドゥー教徒地区を範域として成立した。現在のバングラデシュとの国境は,当時のヒンドゥー,イスラム両教徒の人口に基づいて決定されたため,とりわけガンガー(ガンジス)川以北の州域の形態はきわめて狭長かつ不規則である。州の中心は同川以南のバギラティ・フグリ川水系にある。そこには沖積平野とデルタが発達し,南西境はチョタ・ナーグプル丘陵の東端部に属する。農業は米作を主体とするが,北方のヒマラヤ山脈山麓斜面ではダージリン紅茶で知られる高級茶のプランテーション農業が営まれる。フグリ川下流部はカルカッタ(現,コルカタ)大都市圏を中心とするインド有数の工業集積地帯で,ジュート,繊維,化学,機械,電機などの各種工業が立地する。工業化の端緒は19世紀中期のジュート工業の成立にあるが,同工業は原料生産地をインド・パキスタン分離独立により失い,打撃を受けた。
独立後,アメリカのTVAに範をとったダモーダル川総合開発計画が進められ,同川流域のアサンソールにアルミ製錬,ドゥルガプルに製鉄,化学肥料などの諸工業が立地した。こうした工業の発達にもかかわらず,ボンベイ(現,ムンバイー)をもつマハーラーシュトラ州の躍進とは対照的に,インド経済に占める西ベンガルまたカルカッタの地位低下は著しい。ストライキの頻発や左翼勢力の伸張も,この傾向に拍車をかけている。ビハール州との境界部のガンガー川にファラッカ・ダムを設けて,鉄道・道路併用の南北連絡橋とするとともに,支流フグリ川の水量を増大させて,同川の堆積作用による港湾機能の低下が顕著なカルカッタ港を活性化させる計画が進行中である。また同川河口のハルディアに,カルカッタの外港機能をもつハルディア港が建設され,臨海工業地帯を建設する計画も進みつつあり,すでに精油所と化学肥料工場などが立地している。西ベンガルはベンガル文化の故地としてインド文化の中心の一つであるとともに,カルカッタが1912年まで英領インドの主都であったため,インドにおける最初の近代文化の成立地帯でもあった。現在もこの文化的伝統は強く残っている。
→ベンガル
執筆者:応地 利明
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
インド東部、ガンジス川下流にある州。ウェスト・ベンガルともいう。かつては現在のバングラデシュとともにベンガル地方として一体であったが、1947年の印パ分離独立に伴って東ベンガルは東パキスタン(現在のバングラデシュ)となり、残余が西ベンガル州となった。南北に長い州で、北はネパール、ブータン、シッキム州に接し、南はベンガル湾に至る。面積8万8752平方キロメートル、人口8022万1171(2001)、9127万6115(2011センサス)。州都はコルカタ(カルカッタ)。ガンジス川デルタ地帯に位置し、米、ジュートの産地として知られる。人口密度が高く、コルカタ周辺に多くの都市があり、コルカタ大都市圏を構成する。かつての東インド会社の根拠地で、早くからヨーロッパ文明が取り入れられ、商工業が発達した。しかし独立後は、東パキスタンの分離により市場を喪失し、工業設備の老朽化や難民の流入など、多くの問題を抱えている。
[北川建次]
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