鎌倉時代中期(13世紀)の絵巻。作者不詳。徳川黎明会(れいめいかい)および万野(まんの)家に1巻ずつ所蔵。いずれも重要文化財。放浪の歌人西行の生涯の事跡や逸話を描いたもの。徳川本は、西行の前身佐藤義清(のりきよ)が出家の決心をするところから、嵯峨(さが)の奥で剃髪(ていはつ)出家するところなどを描き、万野本は、西行が旅の庵(いおり)で年の暮れに哀歌を詠むところ、桜の花を尋ねて吉野山に分け入る光景、続いて熊野に行く途中の情景などを描く。絵は細緻(さいち)な描線に淡い色彩を用いた端正な画風で、鎌倉時代の大和(やまと)絵の一典型をなす。
[村重 寧]
『白畑よし編『新修日本絵巻物全集12 西行物語絵巻・当麻曼荼羅縁起』(1977・角川書店)』▽『小松茂美編『日本絵巻大成26 西行物語絵巻』(1979・中央公論社)』
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西行の生涯を描いた絵巻。西行は23歳のときに突如出家し,以後諸国を巡り,詠歌と修行の生涯を送った。その一生に取材した絵巻は後世多くつくられたが,3系統の作品が残る。うち13世紀後半の制作になる2巻の絵巻(徳川美術館と相国寺承天閣美術館に分蔵,重文)が最も古く優れる。ほかに,江戸時代の俵屋宗達(たわらやそうたつ)による模写本がよく知られる。
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…旅の歌僧,遁世聖,西行に関する説話は《古今著聞集》《古事談》《沙石集》《源平盛衰記》などに記されておびただしい数にのぼり,《吾妻鏡》などにも採録されたが,とくに《撰集抄》は,鎌倉時代の各地の説話を旅する西行の見聞としてまとめたもので,西行の伝説化に大きな役割を果たした。他方西行の伝記を書いた《西行物語》《西行物語絵巻》も,中世の人々の間で,無常である現世を捨てて,孤独な旅の生活のなか花や月にあこがれる数寄の心を和歌に託すという,人間の生き方の理想をあらわすものとして読まれ,さまざまな西行伝説の原形となった。西行の伝説は,発心出家の動機と決断をめぐるもの,山居のきびしい修行にたえる行者の姿を語るもの,文覚や西住などとの交遊,崇徳院の供養に関するもの,頼朝にもらった銀の猫を門外に遊ぶ子供に与えたというような無欲潔癖な性格を伝えるもの,院の女房や江口の遊女と歌を読みかわしたというような数寄の心の持主として伝えるもの,など多方面にわたっている。…
…没年をはじめ,伝記は必ずしも史実どおりではなく,伝説・説話的な色彩が強いが,〈道心〉と歌道への〈すき〉に生きた西行の姿を描いて,《問はず語り》の著者や芭蕉など,後世の西行理解に大きな影響を与えた。【今西 祐一郎】
[西行物語絵巻]
西行の生涯の事蹟,逸話を描いた絵巻。もと3~4巻と思われるが,2巻のみ不完全な形で現存。…
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