当麻曼荼羅縁起(読み)タイママンダラエンギ

デジタル大辞泉 「当麻曼荼羅縁起」の意味・読み・例文・類語

たいままんだらえんぎ【当麻曼荼羅縁起】

鎌倉中期の絵巻。2巻。当麻曼荼羅製作にまつわる説話を描いたもの。鎌倉市光明寺蔵。

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精選版 日本国語大辞典 「当麻曼荼羅縁起」の意味・読み・例文・類語

たいままんだらえんぎ【当麻曼荼羅縁起】

  1. 絵巻物。二巻。紙本着色。鎌倉時代の作。住吉慶恩画と伝えるが根拠はない。当麻寺の当麻曼荼羅が織成される経緯に関する伝説を描いたもので精密な描写と典麗な色彩をもつ。神奈川県鎌倉市光明寺蔵。国宝

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改訂新版 世界大百科事典 「当麻曼荼羅縁起」の意味・わかりやすい解説

当麻曼荼羅縁起 (たいままんだらえんぎ)

奈良県当麻寺に伝わる《当麻曼荼羅》制作にまつわる説話を,上下2巻に描いた鎌倉時代の絵巻。近世になって鎌倉の光明寺に寄進され今日に至っている。内容は,天平の昔,横佩大臣(よこはぎのおとど)の姫君が仏法に帰依し,当麻寺に入って生身阿弥陀如来を拝まんことを祈ると,阿弥陀化身である老尼が現れる。姫君はその教えに従って蓮糸を五色に染め,観音が化身した女人の助けを得て大曼荼羅に織り上げ,この図によって親しく極楽浄土ありさまを観想し,やがて臨終の時には阿弥陀と聖衆の来迎を受けて往生をとげるまでを描く。絵巻は料紙を縦に用いて48.8cmもの幅広い画面をつくり,洗練された細緻な描線を用いて各説話場面をゆったりと構成し,温雅な趣を持つ。下巻第3段の姫君が来迎をうけて往生する場面は,巻末にふさわしく阿弥陀聖衆来迎のありさまを大構図にまとめている。その構成は,知恩院所蔵の〈早来迎〉と称される《阿弥陀二十五菩薩来迎図》の系統に酷似しており,仏菩薩を描き出す描線も遅滞なくのびやかに引かれ,絵仏師の参画をも想定させる。この仏画的な来迎場面をはじめ,各段のおおらかな画風や詞書の書風から,制作年代は13世紀中ごろと考えられるが,本作品成立の背景として,そのころの当麻寺曼荼羅堂厨子の修理や,証慧の《当麻曼荼羅縁起》の撰述など,中世に入っての当麻曼荼羅信仰があげられよう。
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