引付(読み)ひきつけ

  • ひっつ・く
  • ひっつ・ける
  • 引付 (ヒツツキ)

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

鎌倉幕府の執権北条時頼が訴訟裁判の審理を慎重にし,かつ,その敏速をはかるために建長1 (1249) 年に設けた制度で,室町幕府にも引継がれた。引付は数方 (方は) に分れ,1方を単位として訴訟事件 (おもに土地関係) を円滑,公平に審理させるもので,現代の裁判所の部にあたる。1方の引付は,若干の評定衆および引付衆 (のちに内談衆) から成る。引付の番数は,3方,5方,8方など時期によって異なる。引付では審理し,判決草案を作るが,その草案は評定により評定会議で可決された。

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世界大百科事典 第2版の解説

(1)中世社会で後日のために先例となる事例を書き留めたり,証拠となる文書等を書写し集めたもの。《貞丈雑記》には,〈引は後日の証拠に引用る為に書き留む。付とは記し付る也〉とある。 形式的には,ある機関や組織における評定記録のような日次記(ひなみき)の形をとる場合と,同じく発給した文書あるいは受け取った文書を日付順に写し集めたものがある。いずれも後日に備えて,運営上の先例となる事例等の記録となり,ときには照会点検原簿となるよう,当事者がその職務遂行の過程で作成したものである。

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精選版 日本国語大辞典の解説

〘名〙
① 引き付けること。引っ張ってくること。手引きをすること。また、その人。紹介者。
※東寺百合文書‐る・応永九年(1402)最勝光院方評定引付「尚も御申候者、和弾正左衛門尉に可引付申候」
鎌倉幕府の裁判機関。所領相論を専門に取扱い、引付勘録を作って評定会議に送った。三~五方の部局に分かれ、各々引付頭人一名、引付衆数名(うち二、三名は評定衆の兼務)、引付奉行人(右筆)数名で構成された。室町幕府にも置かれたが、一五世紀には衰退した。引付方
※吾妻鏡‐建長二年(1250)九月一〇日「今日被仰引付并問注所政所
③ 後日の証拠や備忘のため書きとどめておく記録や文書。また、寺社で作成された記録。
※書陵部所蔵壬生古文書‐土佐国雑掌紀頼兼主殿寮沙汰人伴守方問注記(年未詳)(承安二年(1172)九月か)「凡は当国納物家信・隆能・為三代長官引付顕然候」
④ 俳諧師などが自分の歳旦帳の末に友人・門人などの句を付録として掲載したこと。また、その句。
※俳諧・延宝六年三物揃(1678)「俳諧惣本寺引付 歳旦」
⑤ 遊里などで初会の客に遊女を引き合わせること。また、その客。杯事をするのが例。
※洒落本・粋町甲閨(1779か)「『とんだ事だの馴染か』『なにさ引付さ』」
⑥ 歌舞伎の舞台で、開演中、幕を引きつけてある下手(客席から向かって左側)の部分。
※歌舞伎・金幣猿島都(1829)三立「トド鹿は幕の引附(ヒキツ)けへ入る」
※雑俳・柳多留‐一四六(1838‐40)「烏芋もくちなし引(ひキ)付の硯蓋」
⑧ 駒下駄の一種。男物は白桐・焦桐(やきぎり)を材に、女物は白木あるいは漆塗りで、いずれも表をつけたもの。引付下駄。〔随筆・守貞漫稿(1837‐53)〕
⑨ 発作性の痙攣(けいれん)。特に、小児の全身性痙攣をさす場合が多い。
※病院の窓(1908)〈石川啄木〉「顔面には例の痙攣(ヒキツケ)が起ってピクピク顫へて居た」
[1] 〘自カ五(四)〙 (「ひっ」は接頭語)
① ぴったりとつく。ねばりつく。くっつく。粘着する。
※漢書列伝竺桃抄(1458‐60)王貢両龔鮑第四二「竹にひっついてうすやうのやうなものがあるを葭莩と云り」
※天理本狂言・止動方角(室町末‐近世初)「馬にひっついて、あとからこいと云」
② 男女が親密にする。また、男女が密通する。なれ合って夫婦になる。
※唐詩選国字解(1791)七言古「鴛鴦の雌雄はなれぬ如く、ひっついて側をはなれぬ」
[2] 〘他カ下二〙 ⇒ひっつける(引付)
〘他カ下一〙 ひっつ・く 〘他カ下二〙 「ひきつける(引付)」の変化した語。
※金刀比羅本保元(1220頃か)中「あますな、もらすな。かひつかんでひっ付(ツケ)、頸ねぢ切、八割(やつさき)にさいてすてん」

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世界大百科事典内の引付の言及

【賦】より

…この手続を担当する役人は賦奉行であるが,単に賦とも呼ばれた。鎌倉幕府は訴訟制度を発達させたが,執権北条時頼の時代には,訴訟専門の審理機関として引付(ひきつけ)が設けられた。これは若干名の引付衆と若干名の奉行人とから成るチームで,〈一番引付〉〈二番引付〉などと呼ばれ,その数は時代によって変化があった。…

【引付方】より

…鎌倉・室町両幕府の裁判機関。単に引付ともいう。1249年(建長1)12月9日に初めて置かれた機関で,三~五方の部局に分かれ,所領相論を中心とする裁判を担当した。…

【六波羅探題】より

…次に西国の政務や裁判がある。文永(1264‐75)前後から諸機関の整備が進められ,1267年までに評定衆(ひようじようしゆう),78年までに引付(ひきつけ)ができ,97年までには五方引付が成立している。所務沙汰(しよむざた),雑務沙汰は,鎌倉末まで引付が担当していたが,はじめは探題の権限が強く,引付を中心とする裁判が確立したのは1300‐08年(正安2‐延慶1)ころであった。…

※「引付」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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