頭人(読み)トウニン

デジタル大辞泉 「頭人」の意味・読み・例文・類語

とう‐にん【頭人】

集団のかしら。頭目
工場の―、自らその作れる釜の図を持し」〈中村訳・西国立志編
鎌倉・室町幕府における引付衆長官
室町幕府の政所まんどころ評定所侍所さむらいどころなどの長官。

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精選版 日本国語大辞典 「頭人」の意味・読み・例文・類語

とう‐にん【頭人】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 集団の長として、集団を代表し、統率する人。首領。頭(かしら)。とうじん。〔日葡辞書(1603‐04)〕
    1. [初出の実例]「丹次郎は衒(かたり)の頭人(トウニン)」(出典:人情本・春色梅児誉美(1832‐33)後)
  3. 鎌倉・室町幕府の引付の部局長。引付頭人。頭人奉行。
    1. [初出の実例]「引付事、巳尅以前可行之、云頭人、云奉行人、莫遅参」(出典:吾妻鏡‐建長二年(1250)四月二日)
  4. 室町幕府の政所・評定所・侍所などの長官。
    1. [初出の実例]「執事代事、被付玄良〈頭人真蓮代蜷新右入知温〉」(出典:斎藤基恒日記‐文安六年(1449)四月二日)
  5. 大名の家中の常備軍である各隊の長。番頭(ばんがしら)。物頭(ものがしら)。組頭。
    1. [初出の実例]「大名方に取り入り、所司代・奉行・頭人(トウニン)に目を懸けられ」(出典:仮名草子・浮世物語(1665頃)二)
  6. 歌会・詩会・茶会などの会合で、頭役をつとめる人。世話役主人
    1. [初出の実例]「在京の大名・衆を結んで茶の会を始め、〈略〉初度の頭(トウ)人は奥染物各百宛(づつ)」(出典:太平記(14C後)三三)
  7. 祭礼で、頭役をつとめる人。また、祭礼の世話役。頭屋の主人。
    1. [初出の実例]「自宮本薄縁を東九条へ二畳下行は、頭人二人に下行」(出典:多聞院日記‐文明一〇年(1478)八月一四日)

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改訂新版 世界大百科事典 「頭人」の意味・わかりやすい解説

頭人 (とうにん)

鎌倉・室町両幕府の職名。両幕府の裁判を担当した引付方では,三方あるいは五方等のいくつかの部局で構成されており,その一方(部局)の長官が頭人で,部局を構成する引付衆,奉行人を統率して裁判を指揮した。御家人の指揮や検断(警察裁判)を担当した侍所では,鎌倉幕府においては長官たる別当腹心として事実上指揮・検断権を行使したのが頭人で,室町幕府においては別当が置かれなかったため,頭人が長官として侍所を管轄した。将軍の家政機関としての政所や文書・記録の保管にかかわる問注所の執事は,室町幕府では頭人とも呼ばれ,長官として政所を管轄している。室町幕府ではこのほかに,禅律僧の管轄を担当する禅律方,京都の土地管轄に当たった地方,伊勢神宮の修造にかかわった神宮方等,方の字のつく機構が多く設けられたが,それらの機構の長官はおしなべて頭人と呼ばれており,それに所属する奉行人,寄人を統轄していた。
所司
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山川 日本史小辞典 改訂新版 「頭人」の解説

頭人
とうにん

中世の組織・機関の筆頭構成員。とくに武家政権で用いられた語。鎌倉幕府の引付(ひきつけ)頭人・侍所頭人などが代表例。室町時代になると,組織・機関の長から特定の家格を示す語へとしだいに転化した。ことに中期以降は,鎌倉幕府以来の中枢官僚として評定衆の地位を世襲した波多野・町野・二階堂・摂津の各家をいい,神宮頭人・地方(じかた)頭人・問注所執事(しつじ)などの職を独占した。

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普及版 字通 「頭人」の読み・字形・画数・意味

【頭人】とうじん

首領。

字通「頭」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の頭人の言及

【頭屋(当屋)】より

…神社の祭りや(こう)行事に際し,その準備,執行,後始末などの世話を担当する人,またその家のこと。頭(とう)とはもと儀式などの主宰の責任をゆだねられることを意味し,神事仏事の諸負担を均等化するべく,集団の中に交代勤務を定めるところから,頭役(とうやく)の制が生じ,その勤務者を頭人(とうにん)とよんだ。さらに神事に欠くことのできない斎屋(いみや)(こもりや,こもり堂,精進屋)の存在と結びついて,あまねく祭りに緊要な〈とうや〉の語を生むにいたった。…

【侍所】より

…北条氏は侍所に自己の家人を送り込んでいたが,北条時頼が執権を辞任して後任に一族を立てたものの,実権は掌握しつづけた。それ以降,北条氏得宗(当主)と執権の地位が分離すると,侍所別当の地位には執権がつくが,侍所の実権は頭人(とうにん)に移った。頭人には御内(みうち)人と呼ばれる得宗被官が任ぜられ,末期には御内筆頭である内管領がこれに任じ,得宗に直結して侍所を掌握した。…

【所司】より

…小侍所の所司も小侍所別当の家人が任ぜられた。(4)室町幕府の侍所の長官である頭人(とうにん)のこと。所司の下には代官である所司代,小所司代などが組織された。…

【番】より

…番数や交代勤務の方法はその勤務内容によって一定しないが,1年12ヵ月,1月30ヵ日,および1巡60の干支を配分する関係で,番は12か30あるいは60の約数で編成されている場合が多い。番制度による勤務に当たることを〈当番〉,これを勤めることを〈上番〉〈勤番〉などといい,その結番交名(きようみよう)を〈番文〉〈番帳〉,編成された一つの番の統率者を〈番長〉〈番頭(ばんがしら∥ばんとう)〉あるいは〈頭人(とうにん)〉などと呼ぶ。同一の番所属者は〈合番〉〈相番〉と呼ばれ,そこにはしばしば相互扶助,連帯の感情が認められる。…

【宮座】より

…祭事の執行にあたる神主には,一﨟がなる場合とおとな衆が1年交代でつとめる一年神主(いちねんかんぬし),年番神主の場合とがある。祭事執行に必要な準備にあたるのが頭屋(とうや),当屋,頭人,当人で,その選定は座衆のうちからの年齢順,家順,みくじによるなど各種の方法でなされる。神主と頭屋の機能が分化していない場合も多い。…

※「頭人」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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