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解離性障害 かいりせいしょうがいdissociative disorder

知恵蔵の解説

解離性障害

心的外傷体験の研究が進む中で、「解離」という心の防衛システムが注目されるようになってきた。辛すぎる体験を前にすると、体験している自分自身から感情を切り離す。その結果、外傷体験から心理的に逃避できても、自己の統一性を犠牲にする場合があり、意識記憶の連続性に問題が生じる。解離は心的外傷後ストレス障害(PTSD)を始め他の障害とも関係が深いが、解離を中心とした障害としては、(1)解離性健忘=ストレスの強い重要な個人的記憶が失われる、(2)解離性同一性障害=最も重症で慢性化する、(3)離人症性障害=自分の身体や自己自身に対する非現実感を反復的に持ち、外界の現実感が薄れたりする、(4)解離性遁走=住み慣れた家や仕事から離れて突然放浪に出て、自己の同一性に関する記憶喪失を伴う、など。心的外傷を負った少年たちが、感情が解離した時に万引きや器物破損、残忍な行動などの問題を起こすという指摘もある。

(田中信市 東京国際大学教授 / 2007年)

出典|(株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について | 情報

朝日新聞掲載「キーワード」の解説

解離性障害

心的外傷が主な原因となって、意識や記憶、体験などが本来自分が持っているものと一致しなくなる精神障害総称。記憶や体験を思い出せなくなったり、別の人格が現れ、コントロールされているような感覚を覚えたりする症例がある。

(2012-11-02 朝日新聞 朝刊 奈良1 1地方)

出典|朝日新聞掲載「キーワード」朝日新聞掲載「キーワード」について | 情報

デジタル大辞泉の解説

かいりせい‐しょうがい〔‐シヤウガイ〕【解離性障害】

通常は統合されている意識・記憶・自己同一性などが混乱し、連続性がなくなったり、失われたりする障害。強いストレスや心的外傷が原因で発症すると考えられている。自分に関する重要な情報を広い範囲にわたって思い出せない解離性健忘、精神が体から離脱して自分を傍観者であるかのように感じる離人症性障害、複数の人格状態が存在する解離性同一症、突然、家庭や職場から離れて放浪し、過去を想起することができなくなる解離性遁走(とんそう)などがある。解離症DD(dissociative disorder)。

出典|小学館デジタル大辞泉について | 情報 凡例

家庭医学館の解説

かいりせいしょうがい【解離性障害 Dissociative Disorder】

[どんな病気か]
 以前は、ヒステリーの解離型(かいりがた)と呼ばれていました。ヒステリーには、いくつかの種類があります。からだの病気がないのに、からだに機能障害の出る転換型(てんかんがた)と、その個人の意識に亀裂(きれつ)が生じるのが特徴の解離型があります。解離型では、亀裂が生じることにより、その個人が本来もっている「これが自分だ」という感覚に不連続性が生じます。
[症状]
 たとえば、非常に大きな精神的ショックの後、ある期間失踪(しっそう)してしまい、その間、自分の名前やそれまでの生活について忘れて、新しい名前を使って生活していることがあります。このようなタイプの失踪をフーグ(解離性遁走(かいりせいとんそう))と呼びます。
 失踪はしないまでも、大きなショックの後、自分に対する記憶を失ってしまうことがあります。さまざまな程度のものがありますが、全く記憶を失っている場合を全生活史健忘(ぜんせいかつしけんぼう)といいます。
 フーグでは、解離の期間が比較的はっきりしており、日ごろの生活の場から遁走してしまうので、異常に気づきやすいのですが、慢性的に自己意識に解離症状をもちながら、持続的に同じ社会で生活している場合もあります。
 たとえば、多重人格(たじゅうじんかく)では、自己の中にいくつかの人格があります。おもな人格が一応正面に出て社会生活はしていますが、ストレスには弱く、不適応を生じやすい状態にあります。また、人格全体が解離してしまうところまでいかなくても、「これが自分」という感覚が薄くなり、自分を外から傍観(ぼうかん)しているような感じがしたりします。自分の周りの出来事も現実感がなく、まるで映画でも見ているように感じられる離人症状(りじんしょうじょう)がみられることもあります。離人症状は、健康な人が極度に疲労したり、マインドコントロールを受けたりしても生じます。また、うつ病や薬物依存など、さまざまな精神疾患と関連しても生じます。
 他の精神疾患との鑑別を行ない、治療を始めます。

出典|小学館家庭医学館について | 情報

大辞林 第三版の解説

かいりせいしょうがい【解離性障害】

意識・記憶・同一性・環境の知覚など、通常は統合されている機能が分離される障害の総称。過酷な状況を体験した際に、自己から感情を切り離して逃避することが原因とされる。解離性健忘、解離性同一性障害、離人症性障害、解離性遁走など。

出典|三省堂大辞林 第三版について | 情報

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

解離性障害
かいりせいしょうがい

本来一つにまとまっている意識や記憶および知覚、あるいは自分は自分であるという自己同一性(アイデンティティ)などの感覚を統合する心的機能が、一時的に分離もしくは破綻(はたん)した状態。過去のある期間の出来事の記憶がまるごとすべて抜け落ちる(解離性健忘)、自己同一性が失われ失踪(しっそう)して知らない場所で生活する(解離性遁走(とんそう))、それは自分に起きていることではないと感じられるなど現実感を失う(離人症)、あるいは体の感覚を一部失ったり体が動かせなくなるなどの症状が深刻となり、日常生活や社会生活にさまざまな支障をきたすようになる。解離性健忘や離人症は、ストレスや心的外傷など、過去の耐えられないほどつらいと感じた体験の記憶を、自分から切り離し思い出さないように封じ込めようとする防衛機制の一つと考えられている。こうした解離現象は、健康人にも病的にではなく一時的に現れる場合がある。
 解離性障害でもっとも重い症状が解離性同一性障害(多重人格障害)で、感情や記憶を絶つことによって、自分のなかに別の複数の人格が交互に現れるようになり、ある人格が現れていたときには、その他の人格が現れているときの記憶がないため、周囲の理解が得られず生活に支障をきたすようになる。DID(Dissociative Identity Disorder)と略称される。
 世界保健機関(WHO)の国際疾病分類(ICD-10)では解離性(転換性)障害として、過去の記憶、同一性と直接的感覚の意識、身体運動のコントロールの間の正常な統合が一部ないし完全に失われた状態と定義されているが、アメリカ精神医学会の『精神障害の診断と統計の手引き 第5版(DSM-5)』では、意識、記憶、同一性、環境の知覚というふだんは統合されている機能の混乱というやや狭義の内容となっている。[編集部]

出典|小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について | 情報 凡例

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