離人症(読み)リジンショウ(英語表記)depersonalization

デジタル大辞泉 「離人症」の意味・読み・例文・類語

りじん‐しょう〔‐シヤウ〕【離人症】

神経症統合失調症などに現れる異常心理の症状一つで、自分自身思考行動身体外界に対して現実感を喪失したり疎外感をいだいたりする意識体験。過労時には健康な人にも現れることがある。

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精選版 日本国語大辞典 「離人症」の意味・読み・例文・類語

りじん‐しょう‥シャウ【離人症】

  1. 〘 名詞 〙 精神症状の一つ。自分が考え行動しているにもかかわらず、その実感がなく、生彩を欠き、自分は考えることも喜びも悲しみも感じられないと訴える症状。
    1. [初出の実例]「あなたの症状は離人症といふんですが」(出典:野火(1951)〈大岡昇平〉三八)

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改訂新版 世界大百科事典 「離人症」の意味・わかりやすい解説

離人症 (りじんしょう)
depersonalization

行為の能動感,知覚の自己所属感,身体と自己の一体感,自己の同一性などが希薄化して,物事や自分自身についての実感が消失したさいの主観的な訴えに対して用いられる症状名。外の風景やそこにいる人物や木々が単に絵はがきでも見るようで,いきいきと感じられないと訴える現実感喪失,自分が自分として感じられなくなった,なにか今までの自分と違ってしまった感じがする,自分のしている行動に自分がしているという実感がない,自分の身体が自分として感じられない,などの人格感喪失が主観的に訴えられるだけで,他覚的には異常が見いだされない。これらは神経症,うつ病,統合失調症の症状として出現するほか,正常者でも疲労困憊こんぱい)時に現れる。この離人症状だけが長期にわたって出現しているものを離人神経症depersonalization neurosisあるいは単に離人症といい,10歳代の後半から20歳代前半を中心に出現するものが多い。女子に多くみられるとされ,一定期間の強い感動体験,感情緊張が続いてそれが解消したとき,あるいはまったくいきなり出現し,数年間も持続する。治療は困難だが余病を併発することはまずない。主観的訴えが強く,そのため現実適応が困難になることもある。1992年の《疾病及び関連保健問題の国際統計分類》第10版(ICD-10)では離人・現実感喪失症候群depersonalization derealization syndrome,1994年の《アメリカ精神医学会障害診断・統計用語集》第4版(DSM Ⅳ)では離人症性障害depersonalization disorderとして掲載されている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「離人症」の意味・わかりやすい解説

離人症
りじんしょう
depersonalization

1898年フランスのデュガL. Dugasによって初めて唱えられた精神病理学用語。それは生命的感情の喪失感であるが、通常「自分を取り巻く外界が現実のものと感じられない」という非現実感、「自分自身の存在の確かさが感じられない」という空虚感、「自分の体が自分のものだと感じられない」という非自己所属感の三つに分けられる。

 20世紀に入り、これら対象を異にする三つの喪失感について異常心理学の立場から多くの論議がなされたが、しだいに、このような異なる異常心理の背後に存する全体的精神病理に目が向けられるようになり、神経症のみならず、うつ病や統合失調症(精神分裂病)初期における離人症症状にも注目されるようになった。

[荻野恒一]

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百科事典マイペディア 「離人症」の意味・わかりやすい解説

離人症【りじんしょう】

精神活動や行動に伴う能動意識が消失した状態をいう。患者は外界の事物を完全に知覚できるが,それらは非現実的で生彩を欠いているように感じられる。神経症の一型として,または統合失調症精神分裂病)の初期,鬱(うつ)病などの際みられる。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「離人症」の意味・わかりやすい解説

離人症
りじんしょう
depersonalization

人格喪失感。自分自身が行動していながら実感が伴わない,自分が本来の自分と思えない,という自我意識 (→自我 ) の障害が中心になって,自分の身体が自分のものという感じがしない,という身体意識の障害や,物を見ているのにピンとこない,という対象意識面の障害などを伴う症状。ピエール・ジャネはこの障害の背景に空虚感を考え,自我の実在機能の減退を自我が自覚している状態と説明した。離人症は疲労時のほか,神経症,うつ病,統合失調症などに付随して現れる。

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