翻訳|training
動物に情緒的な働きかけをし,特定の人の命令にしたがい,一定の行為を行わせるようにする訓練の過程をいう。古代,動物の家畜化すなわち牧畜の起源とともに調教の歴史は始まり,旧約聖書にも,イスラエルの王ソロモンがたくさんの動物を収集して飼いならし,またウマを調教して戦車の牽引(けんいん)や騎乗用に使用したという記述がある。古代ローマ時代になると,猛獣の格闘といった娯楽的要素をもつ調教が始まり,ゾウ,ライオン,トラなどでの戦車競走もみられた。近世ではルネサンスとともに,ヨーロッパ王侯貴族のもとで狩猟用野生動物の調教がみられたが,近代的動物園の確立に伴い,野生動物が広く馴致調教されるようになった。
役用家畜の調教には基本的な動作を教え込む基礎調教と,細かい困難な動作を身につけさせる使役調教とがある。成熟した個体の調教は困難であるから,生後18~24ヵ月齢の若いものについて行う必要がある。役畜を御す追綱は,ふつうウシは一本綱,ウマは二本綱を用い,この追綱の操作と言葉による命令で家畜を動かす。また,日本では猿回しのサルやヤマガラのおみくじひきのような伝統的な動物芸があるが,これらについても独特の調教法が知られている。
馴致調教の目的は,広義には動物を飼育下のすべての条件に順応させ,より快適な生活を維持させることにあるが,狭義には動物のもつ本能や能力をより人間の意図した用途に使用することにある。調教は,基本的には動物の生理生態に応じ,それぞれの動物のもつ本能を利用して,条件づけを通して行われる。しかし高等な動物では,本能的条件づけより1歩進み,成功したときの愛撫や餌の報償づけや,反対に罰による逃避訓練,危険信号に対する回避訓練などにより,さらに進んだ調教が可能である。具体的には,調教者は動物との信頼関係を保ちながら,条件づけ,意図理解(エデュケーション),訓練(トレーニング)といった段階を正確な基準にしたがい,信賞必罰主義で実施するのが基本である。サーカスや動物園では,サル類,猛獣類,ゾウなどを使っての動物ショーが行われており,またイルカ,アシカなどの海獣類も調教されている。最近では鳥類のショーも行われだし,さらにイシダイなどの魚類の調教も水族館でみられるが,これらは本能だけを利用した方法で調教されている。競馬では,ウマの走る能力を最高に発揮させるために調教が実施されるが,日本では,日本中央競馬会の調教師免許試験に合格した調教師が行う(〈競馬〉の項目を参照)。イヌは本質的に従順で,服従心に富む性格をもっており,この素質をひき出し,人間のために役だたせるよう調教するが,狩猟犬,警察犬,盲導犬などは調教による使役犬の例である。イヌの調教師は日本では訓練士とよばれ,各種犬種団体による公認訓練士の資格制度がある。
執筆者:正田 陽一+片井 信之
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…環境や運動の刺激に対する人体の適応性を利用し,身体運動を行うことによって意志力を含めた人間の体力を高めること,もしくはその過程をいう。生体は運動という刺激(トレーニング負荷)によって変化を生じ,それを繰り返すことによって機能を高めることができる。これをトレーニング効果と呼び,期待できる効果として,筋力,持久力をはじめとして,神経系統の機能が高まることによる調節力,巧緻性の向上があげられる。トレーニング負荷の指標としては,心身の生理的な応答がとれうる内的負荷と,走向距離や挙上重量などを指標とする外的負荷がある。…
※「調教」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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