デジタル大辞泉
「負す」の意味・読み・例文・類語
おお・す〔おほす〕【▽負す/▽課す】
[動サ下二]
1 背に負わせる。かつがせる。
「片思ひを馬荷ふつまに―・せ持て越辺に遣らば人かたはむかも」〈万・四〇八一〉
2 責任や罪などを負わせる。
「まさに重き罪に―・せむ」〈孝徳紀〉
3 命じて、物などを出させる。課役する。課税する。
「諸国に―・せて船舶を造らしむ」〈皇極紀〉
4 名をつける。
「且名を―・せて稲田宮主須賀之八耳神と号け給ひき」〈記・上〉
5 危害などを被らせる。受けさせる。
「やにはに十二人射殺して、十一人に手―・せたれば」〈平家・四〉
6 負債を負わせる。貸す。
「ナンヂニ―・セタ小麦一石」〈天草本伊曽保・犬と羊〉
おう・す〔おふす〕【▽負す】
[動サ下二]
1 《「おお(仰)す」の上代東国方言》命令する。
「潮舟の舳越そ白波にはしくも―・せたまほか思はへなくに」〈万・四三八九〉
2 「おお(負)す1」に同じ。
「越後国より鮭を馬に―・せて」〈宇治拾遺・一〉
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
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おお・すおほす【負・課・仰】
- 〘 他動詞 サ行下二段活用 〙
- [ 一 ] ( 負・課 ) 「おう(負)」に対する使役形で、「負わせる」の意。
- ① 背に負わせる。物などを持たせる。
- [初出の実例]「片思ひを馬にふつまに於保世(オホセ)もて越辺(こしへ)にやらば人かたはむかも」(出典:万葉集(8C後)一八・四〇八一)
- 「さまざまにせさせ給ふことは多かりけれど、〈略〉ただこの人におほせたる程なりけり」(出典:源氏物語(1001‐14頃)蜻蛉)
- ② 責めを負わせる。罪をかぶせる。責任を持たせる。かこつける。
- [初出の実例]「他(ひと)の貨賂(まひなひ)を取りては、二倍(ふたへ)して徴(はた)らむ。遂に軽さ重さを以て罪科(オホセむ)」(出典:日本書紀(720)大化元年八月(北野本訓))
- 「もろともに罪をおほせ給ふは、恨めしき事になむ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)乙女)
- ③ ( 名を負わせるの意で ) 名をつける。
- [初出の実例]「名を負(おほせ)て、稲田宮主須賀之八耳神と号(なづ)けたまひき」(出典:古事記(712)上)
- ④ 受けさせる。こうむらせる。また、特に「手おほす」の形で、傷つける。
- [初出の実例]「をしと思ふ心はなくてこのたびは行く馬にむちをおほせつるかな〈よみ人しらず〉」(出典:後撰和歌集(951‐953頃)離別・一三一一)
- 「走りかかりつつ斬り廻りけるを、あまたして手おほせ、打ち伏せて縛りけり」(出典:徒然草(1331頃)八七)
- ⑤ ( 物を出す義務などを負わせるの意で ) 物などを出すことを命ずる。課税する。課役する。
- [初出の実例]「復、諸国(くにくに)に課(オホセ)て、船舶(ふね)を造ら使む」(出典:日本書紀(720)皇極元年九月(図書寮本訓))
- ⑥ ( 債務を負わせる、負財させるの意で ) 借りさせる。貸す。
- [初出の実例]「つゐにはわたす大はん若きゃう おほせたる六百貫をせめられて」(出典:俳諧・竹馬狂吟集(1499)一〇)
- [ 二 ] ( 仰 ) ( [ 一 ]から出たもので、「ことばを負わせる」というところから、言いつける、命令するの意となり、上位者から下位者に命ずるのが普通であるところから、尊敬語意識が生じた。また、上位者のことばを、言いつけられたものとする気持からか、一方では単に「言う」の尊敬語としての用法も生ずる )
- ① ( 尊敬語意識を含むことも多い ) 上位から下位に向かって言いつける、命令する。お言いつけになる。御命令になる。
- (イ) 単独で用いる場合。
- [初出の実例]「伊迦賀色許男の命に仰(おほ)せて、天の八十毘羅訶(やそびらか)を作り、天神地祇の社を定め奉りたまひ」(出典:古事記(712)中)
- 「大井の土民におほせて、水車を造らせられけり」(出典:徒然草(1331頃)五一)
- (ロ) 「仰せ給ふ」の形で用いる場合。「給ふ」は上位から下位へ与える意で、「仰す」について命令する方向をはっきりさせたものか。中には、「仰せ」が動詞連用形か名詞か判別しにくい用例もある。御命令下される。
- [初出の実例]「又 百済の国に『若し賢(さか)しき人有らば貢上(たてまつ)れ』と科(おほせ)賜ひき」(出典:古事記(712)中)
- (ハ) 「仰せらる」の形で用いる場合。→おおせられる。
- ② 「言う」の尊敬語。おっしゃる。「のたまう」に比べ、これの方が下位者に言いかける、問いかける気持を含み、また、中世初期ごろには敬意も強かったようである。
- (イ) 単独で用いる場合。
- [初出の実例]「さきにおほするなむ、例忠房舌をまき頭をたれて」(出典:延喜廿一年京極御息所褒子歌合(921))
- (ロ) 「仰せ給ふ」の形で用いる場合。
- [初出の実例]「御子の君〈略〉かしこき玉の枝を作らせ給ひて、官(つかさ)も賜はむとおほせ給ひき」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
- (ハ) 「仰せらる」の形で用いる場合。→おおせられる
おう・すおふす【負】
- 〘 他動詞 サ行下二段活用 〙 命ずる、言いつける意の「おおす(負)」の上代東国方言。
- [初出の実例]「潮船の舳(へ)越そ白波にはしくも於不世(オフセ)賜ほか思はへなくに」(出典:万葉集(8C後)二〇・四三八九)
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
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