犯罪に対する制裁(刑罰)として、受刑者から一定の財産的利益を剥奪(はくだつ)すること。財産刑は、自由刑とともに、近代的な刑罰制度のなかで中心的位置を占める。現行刑法には、財産刑として、罰金、科料のほか、付加刑としての没収がある(刑法9条)。罰金は1万円以上、科料は1000円以上1万円未満と規定されている(同法15条・17条)。なお、前出の罰金または科料を完納することができない者については、罰金につき1日以上2年以下、科料につき1日以上30日以下の期間、労役場に留置する一種の換刑処分が設けられている(刑法18条)。このように、財産刑、とくに罰金刑は、受刑者の貧富の差により不公平を生じるため、日数罰金制のように受刑者の資産に応じて個別的に罰金額を算定する制度を採用する国もある(ドイツ、スウェーデン、デンマークなど)。
次に、没収とは、犯罪に関係のある特定の物の所有権を受刑者から剥奪し、国庫に帰属させる制度である(刑法19条)。没収は付加刑であるから、主刑の言渡しを前提として、これに付加的にのみ科しうるにすぎない。なお、没収の対象とされた物につき、その全部または一部を没収することが不可能である場合には、それにかわる一定の金額を国庫に納付させうる(刑法19条の2)。これを「追徴」という。追徴は財産刑ではないが、付加刑としての没収に準じるものである。
[名和鐵郎]
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