追徴(読み)ついちょう

日本大百科全書(ニッポニカ)「追徴」の解説

追徴
ついちょう

刑法上は、犯罪行為により生じもしくはこれにより得たもの、または犯罪行為の報酬として得たものや、その対価として得たものの全部または一部が没収できないときに、没収にかわって、その価額の納付を強制する処分(刑法19条の二)。追徴は、犯罪行為により得た不正の利益を犯人から取り上げることを目的とする。没収、追徴は、裁判官の裁量によるが、賄賂(わいろ)に関してはかならず行う(同法197条の五)。

 行政法上は、公租公課を不正に免れた場合、その全部または不足額を徴収することをいう。関税法(脱税・密輸)、酒税法(密造など)には没収・追徴の規定があり、貨物・密造酒などを必要的に没収し、あるいはその価額を追徴することにしている。

[須々木主一]

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デジタル大辞泉「追徴」の解説

つい‐ちょう【追徴】

[名](スル)
追加して取ること。あとから不足分を取り立てること。「会費の未納分を追徴する」
行政法上、租税その他の公課について、納付すべき金額を納付しないとき、その不足額を義務者から収すること。
刑法上、没収の目的物の全部または一部が消費されたりして没収できないとき、その物の価額の納付を強制する処分

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「追徴」の解説

追徴
ついちょう

(1) 刑法上,判決で言い渡される没収が,費消,紛失,毀損,加工など対象物の消滅,同一性の喪失によって不能な場合になされる一定金額の国庫納入命令処分をいう。これは刑罰ではないが,付加刑たる没収の代償処分としての性質を有する。追徴がなされるのは,犯罪生成物,犯罪取得物,犯罪報酬物,またはこれらの物の対価として得た物の全部または一部を没収しえないときである (19条ノ2) 。犯罪の供用物件などについては追徴は適用されない。追徴は任意的な場合と必要的な場合とがあり,19条ノ2所定の場合は前者であり,197条ノ5の賄賂の場合は後者である。 (2) 行政法上,租税その他の公課で納付すべき金額を納付しない場合,その不足金額を徴収すること。

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精選版 日本国語大辞典「追徴」の解説

つい‐ちょう【追徴】

〘名〙
① 追加してとること。あとから不足分をとりたてること。
※米欧回覧実記(1877)〈久米邦武〉一「如此きも其財本を追徴することなし」 〔旧唐書‐孔緯伝〕
② 刑法上、没収できる物の全部または一部が消費されたりして没収できなくなったとき、その没収できない部分の価額を取り立てること。
※刑法(明治四〇年)(1907)一九七条「若し其全部又は一部を没収すること能はざるときは其価額を追徴す」
③ あとであきらかにすること。
※新聞雑誌‐三一号・明治五年(1872)二月「古器旧物に至ては、時勢の推遷制度の沿革を追徴(ツイチョウ)すべき要物なるに因り」

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世界大百科事典 第2版「追徴」の解説

ついちょう【追徴】

刑法上,没収できる物のうち,犯罪行為により生じまたは得た物,犯罪行為の報酬として得た物,またはこれらの対価として得た物の全部または一部を没収することができない場合,その価額に相当する金銭を徴収することをいう(刑法19条の2)。犯人に犯罪による利益を保持させないことを目的とし,没収の換刑処分的意味をもつが,刑そのものではない。もっとも,追徴は,金銭の納付を命ずるものであるから,実質的には罰金と同じ負担となり,事実上没収よりも重い処分となることも少なくない。

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