翻訳|poverty line
最低生活を営むのに必要な所得の水準。貧困線と訳すこともある。イギリスのB.S.ラウントリーが貧困者数を統計的に推定するために提起した。日本では生活保護基準がそれに相当し,その水準に満たない低所得者は生活保護制度の適用をうけることができる。
貧困感は,食べるものにもこと欠き,肉体的生存を維持することができないときに最も強く意識される。このような意識は絶対的貧困absolute sufferingと呼ばれ,栄養失調や飢餓に苦しんでいる時代にはどこでも観察される。日本でも第2次大戦直後には国民の平均的消費水準が戦前の半分にまで低下し,そうしたなかでこの絶対的貧困が大問題となった。このような時代における貧乏線は,肉体的生存を維持するために必要な飲食物摂取量の市場価格を基礎にして決められる。他方,飢餓からの解放が実現されると,代わって身の回りにいる他者との比較から相対的貧困relative deprivationが意識されはじめる。このような新しい貧困が問題になると,貧乏線の決め方も平均的な生活水準との格差を念頭においた方式に代わる。西欧諸国では今日,このような考え方が一般に採用されている。日本でも1965年度以降,サラリーマン世帯の平均消費水準の60%を目安にして生活保護基準が設定されるようになり,今日にいたっている。
→生活保護
執筆者:高山 憲之
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…最も低い生活費ではなく,生活を維持するために最低限必要とされる生活費の意味であるが,それの具体的内容となると,いくつかの見解がある。B.S.ラウントリーが貧乏測定のために算出した貧乏線は,〈単なる肉体的な能率を維持できる生活費〉の意味であったが,のちに彼は最低賃金の基準にすべきだとする〈人間的必要生活費〉を算定している。前者は動物的生存ともいうべきもの,後者はそれに文化的必要を加味したものであった。…
…さらに再起しえない悲惨な貧困地域を随所に発生せしめる。 生存充足の絶対量を確保しえないものを絶対的貧困というが,この絶対的貧困の測定方式として,生活必需物資の量を積み上げて貧乏線poverty lineを算定するマーケット・バスケット方式などがある。やがて絶対的貧困から脱して,一般社会の平均とか標準とかの生活水準との比較による相対的貧困がとり上げられる。…
…C.ブースのロンドン調査に啓発され,ヨークの貧困調査(3回にわたる)を実施した。第1回調査(1899実施)では2種の貧乏線poverty lineを設定しているが,一次貧困とは,その収入が栄養基準を基礎として,絶対的な肉体的能率の維持にも不足する世帯,二次貧困とは飲酒,賭博などに消費されない限りは充足できる世帯をいう。その結果,一次貧困での貧困率は,対総人口9.9%,対労働階級人口15.5%という高きをみた。…
※「貧乏線」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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