賃金水準を相互に比較した場合にみられる相対的な賃金の開きのこと。賃金格差をみる際には、一般に、ある一定の基準に基づいて労働者をグループ分けし、同一時点をとって比較する方法をとる。通常、問題とされる賃金格差には、労働者の属性の違いに注目する男女別、年齢別、学歴別、勤続年数別などの格差、企業の性格の違いに注目する産業別、企業規模別、地域別などの格差、国際的な関係をみる国別の格差などがある。実際に用いられるときには、その利用目的に応じて、これらがさまざまに組み合わされることが多い。
賃金格差を基礎づけている基本的要因は、労働力の価値の差と、労働力商品の需要供給関係の違いであるが、これらが現実の賃金格差をそのまま規定しているわけではなく、現実の賃金格差は、労働者間のさまざまな差異を利用して賃金水準を押し下げようとする資本家の賃金政策、それに対抗して格差の是正を求める労働組合の運動、最低賃金制などの国の賃金制度などの諸要因による作用を受けたものである。また、国別の賃金格差は、各国の労働者階級の置かれた歴史的・社会的諸条件、自然的条件、物価水準、労働生産性の違いなどの諸要因にも規定されている。
日本の場合、欧米の先進諸国に比べて賃金格差が著しく、このことが全体の賃金水準を押し下げる重要な要因となっている。とくに企業規模別賃金には、伝統的な経済構造の二重性、企業別賃金決定などを反映して著しい格差が存在する。昭和40年代前半に若干縮小ぎみに推移したものの、それ以降はむしろ拡大傾向にある。男女別賃金格差は、男女雇用機会均等法などの影響もあってやや縮小の兆しをみせているものの、依然として著しい格差が存在する。これらに加えて、1980年代の半ば以降、雇用形態の多様化や賃金の職能給化、総合職・一般職制度などの複線型人事制度の導入などによって、新たな賃金格差が生じている。近年、管理職・専門職を中心に広がりつつある年俸制は、能力主義の徹底を通じて賃金格差を一層拡大する方向へ作用する。最低賃金制などの、国による賃金規制の立ち後れが、こうした格差の是正を押しとどめている点も無視できない。
[横山寿一]
『社会政策学会編『現代日本の賃金問題』(1982・御茶の水書房)』▽『中島通子・山田省三・中下裕子著『男女同一賃金』(1994・有斐閣)』▽『社会政策叢書編集委員会『今日の賃金問題』(1997・啓文社)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 (株)アクティブアンドカンパニー人材マネジメント用語集について 情報
…賃金構造とは賃金格差wage differentialsの構造であるといってよい。その格差は多くの側面で見いだされる。…
※「賃金格差」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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