赤と黒(読み)あかとくろ(英語表記)Le rouge et le noir

精選版 日本国語大辞典 「赤と黒」の意味・読み・例文・類語

あかとくろ【赤と黒】

(原題Le Rouge et le Noir) 長編小説。一八三〇年刊。スタンダール代表作。青年ジュリアン=ソレルの野望と、レナール夫人や侯爵令嬢マチルドとの愛を描いた心理小説で、近代小説のさきがけとされる。

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デジタル大辞泉 「赤と黒」の意味・読み・例文・類語

あかとくろ【赤と黒】

《原題、〈フランスLe Rouge et le Noirスタンダールの長編小説。1830年刊。貧しい青年ジュリアン=ソレルの野望と恋愛の一生を通じて、軍人か僧侶になるしか出世の道がなかった王政復古期の社会を批判的に描く。
日本の詩誌。大正12年(1923)創刊、翌大正13年(1924)廃刊。同人に、岡本潤・川崎長太郎・壺井繁治・萩原恭次郎小野十三郎・林政雄。アナーキズムの傾向が見られる。

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改訂新版 世界大百科事典 「赤と黒」の意味・わかりやすい解説

赤と黒 (あかとくろ)
Le rouge et le noir

スタンダールの長編小説。1830年刊。素材は1827年に起きた元神学生の殺人未遂事件。才能に恵まれ野心に燃える貧しい青年の立身出世とその挫折の物語を通じ,王政復古期(1814-30)という一時代を描破し得た小説として,作者の代表作とされる。精緻な心理小説としての評価もさることながら,政治小説・社会小説としての側面も見落とせず,〈1830年年代史〉という副題は意味深い。時代を活写する細部に富むのは事実だが,それはバルザック風の社会のパノラマではなく,たとえば主人公の独白多用という一事からも察せられるように,視点を局限し,いっさいを作中人物の意識というレンズを通して描こうとする〈主観的リアリズム〉にこそ,作者の独創性は求められよう。作者の意図・方法の斬新さは,無愛想な文体のためもあって当時は理解されず,19世紀後半をまって再評価されることになる。題名については諸説があるが,赤を帝政時代の栄光(ないし軍服),黒を王政復古期の暗黒(ないし僧服)の象徴と見る説が有力である。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「赤と黒」の意味・わかりやすい解説

赤と黒
あかとくろ
Le Rouge et le Noir

フランスの小説家スタンダールの小説。副題「1830年年代記」。 1830年刊。ナポレオン没落後,軍隊での栄達の道が閉ざされた時代の野心ある青年ジュリアン・ソレルが,策謀と強固な意志を武器に家庭教師,神学生,貴族の秘書を経て,その娘との結婚により社会的成功を得ようとする直前,昔の恋人レナール夫人の告発により挫折。復讐のため彼女を狙撃するが,獄中で彼女の真情を知り,死刑前の数ヵ月を平安と幸福のうちに過す。理知と情熱の両面をもつエゴチスト (自意識家) の複雑な性格の分析と王政復古期のフランス社会の鋭い批判によって,フランス近代小説の最初の傑作とされる。題名は当時の野心の目標,軍服 (赤) と僧服 (黒) を表わす。

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百科事典マイペディア 「赤と黒」の意味・わかりやすい解説

赤と黒【あかとくろ】

スタンダール作の小説。《Le rouge et le noir》。1830年刊。本格的近代心理小説の最初といわれる。副題〈1830年年代史〉が示す通り,王政復古下の情勢を描写した政治社会小説でもある。赤は軍服,黒は僧服を象徴するといわれる。地方青年ジュリアン・ソレルの立身の夢,偽善,心理的駆引き,恋,断頭台上に落命するまでの短い生涯を描く。第1部はレナール夫人との恋,地方生活,第2部はマチルドとの恋,パリの生活。

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旺文社世界史事典 三訂版 「赤と黒」の解説

赤と黒
あかとくろ
Le Rouge et le Noir

フランスの小説家スタンダールの代表作
1830年刊。赤は貴族の軍服,黒は僧服を象徴。ナポレオン1世を崇拝し,これら特権階級に敵意を抱く主人公ジュリアン=ソレルを中心に精密な心理描写を行い,近代文学の先駆となった。

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デジタル大辞泉プラス 「赤と黒」の解説

赤と黒〔舞台〕

宝塚歌劇団による舞台演目のひとつ。1976年、東京宝塚劇場にて月組が初演。原作はスタンダールの同名小説。前年に宝塚大劇場で上演された『恋こそ我がいのち 「赤と黒」より』を改題。

赤と黒〔ドラマ〕

韓国のテレビドラマ。2010年5月放映開始(全17話)。別題「悪い男」。出演は、キム・ナムギル、ハン・ガイン、キム・ジェウク、豊原功補ほか。

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