超分子化学(読み)チョウブンシカガク(英語表記)supramolecular chemistry

デジタル大辞泉 「超分子化学」の意味・読み・例文・類語

ちょうぶんし‐かがく〔テウブンシクワガク〕【超分子化学】

超分子対象とする化学の一分野。多数分子共有結合以外の相互作用によって、自律的に組織立った構造をとる自己組織化などの現象を扱う。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「超分子化学」の意味・わかりやすい解説

超分子化学
ちょうぶんしかがく
supramolecular chemistry

炭素‐炭素結合などの共有結合で構築された「分子」に対して、複数の分子が配位結合水素結合、π(パイ)電子の相互作用など、共有結合以外の結合や相互作用により秩序だって集合した物質を「超分子」とよび、その学問分野を「超分子化学」とよぶ。超分子の形成に利用される結合や相互作用は可逆的であり、その意味において超分子は動的な分子集合体・組織体とみなすことができる。

 「超分子化学」は、ノーベル化学賞受賞者であるジャンマリー・レーンにより提唱された学問分野である。歴史的にはクラウンエーテルなどによるゲスト分子捕捉(ほそく)現象を扱う「ホスト・ゲスト化学」に端を発しており、レーンは、クラウンエーテルの発見者であるチャールズ・ペダーセンおよびドナルド・クラムとともにノーベル化学賞を受賞している。その後、超分子化学は自己集合や自己組織化といったキーワードを得て、ボトムアップ型ナノテクノロジーの中核として破格の発展を遂げている。

 超分子化学が対象とする系は広義の意味において大きく広がっている。たとえば、ロタキサンカテナンのように、複数の分子(ロタキサンの場合は軸状分子と環状分子、カテナンの場合は環状分子どうし)が互いに貫通し、特定の共有結合が切断しない限りはずれなくなったものも超分子とみなされている。また、ミセルベシクルなどのコロイド、物理ゲル、液晶に対しても超分子化学の概念が適用されるようになっている。これらは、セラミックス金属などの硬い材料とは異なり、環境に応じて分子の集合形式、ひいては物性や機能を変えるなどの動的性質を有することから、ソフトマテリアルとよばれている。

相田卓三

『斎藤勝裕著『超分子化学の基礎』(2001・化学同人)』『戸田三津夫・戸田芙三夫著『超分子化学入門』(2006・裳華房)』

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