超音波探傷(読み)ちょうおんぱたんしょう(英語表記)ultrasonic inspection

改訂新版 世界大百科事典 「超音波探傷」の意味・わかりやすい解説

超音波探傷 (ちょうおんぱたんしょう)
ultrasonic inspection

非破壊検査法の一種。人の耳で聞くことができる音波よりも周波数の高い超音波を利用して,材料の内部欠陥を検出する方法。周波数0.5~10MHz程度のものが用いられている。方法には反射法,透過法,共振法があるが,現在用いられているのはほとんどパルス反射法と呼ばれるものである。この方法で使用される装置は,パルスを発生する電気回路,このパルスによって水晶の圧電効果を利用して超音波を発生し試験体に入射する探傷子(一つの探傷子で超音波の送信・受信を行うものが多い),受信した超音波を表示・記録する電子機器の三つの装置から成っている。これらを可搬形にまとめて試験する構造物のところへ持って行き試験体に探傷子を人手で押しつけて検査するものと,工場の検査室などに設置されていて,試験体と探傷子との位置関係を保持する機構や試験体を自動的に送り各部を連続的に探傷する機構をもつものとがある。超音波を効率よく試験体に入射するために,人手によるときは試験体に油を塗り探傷子を押しつける,自動測定のときは探傷子と試験体とをいっしょに水中に沈める,などの方法がとられている。原理レーダーで飛来する飛行機を発見するのに似ている。試験体に入射した超音波は試験体の内部を伝わり,普通は裏面で反射する。試験体内部に欠陥があると,そこでも反射する。そこでパルスの反射を受信して記録し,それを観察することによって欠陥の有無,大きさ,性状を知ることができる。探傷法として,検出できる限界が小さい,割れのような面状欠陥の検出能力が高い,探傷可能な厚さが大で,片面のみ利用ができればよい,探傷速度が速く,装置・費用が安価である,健康上の配慮が不必要である,などすぐれた点が多い。しかし観測した波形解釈にはかなりの技術を要する。使用する周波数,探傷子の設計,超音波の集束と入射方向,使用する探傷子の個数,使用する電子機器,自動化の技術,既知の欠陥と検出波形の対応など,多方面からの研究開発が進められ,現在かなりの検出感度と信頼性が得られている。金属の板や管の製品検査などに広く使用されており,構造物の溶接部付近の検査などには今後ますます用いられると思われる。
非破壊検査
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百科事典マイペディア 「超音波探傷」の意味・わかりやすい解説

超音波探傷【ちょうおんぱたんしょう】

超音波を利用して金属材料などの欠陥を検出する非破壊検査。超音波が物体内部を通過する際,欠陥部分に突き当たると一部は入射方向に反射し,透過エネルギーが減衰することから,反射および透過波の強弱により,欠陥の有無,大きさ,性状などを知る。使用する超音波の周波数は0.5〜10MHz。
→関連項目超音波

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