雅楽の唐楽曲。越殿楽とも。舞はなく管絃(かんげん)のみ。盤渉調(ばんしきちょう)、黄鐘調(おうしきちょう)、平調(ひょうじょう)の3種がある。盤渉調越天楽が原曲で、他の二つは「渡物(わたしもの)」(一種の移調)として16世紀ごろつくられたという。いずれも明確な三部形式。楽曲全体を三返(あるいは五返)繰り返す間に楽器を減じ、箏(そう)の技法を強調して聞かせる「残楽(のこりがく)」の奏法でしばしば奏される。平調越天楽は雅楽、ひいては日本音楽の代表曲。僧賢順(けんじゅん)が箏組歌(ことくみうた)『富貴(ふき)』をつくって筑紫(つくし)流をおこしたほか、宮城(みやぎ)道雄の『越天楽変奏曲』、近衛秀麿(このえひでまろ)・直麿(なおまろ)兄弟の交響曲編曲でも有名。この旋律に七五調四句を付した平安中期の今様(いまよう)をとくに『越天楽今様』という。なかでも筑前(ちくぜん)今様は今日の『黒田節』(酒は飲め飲め……)の原曲である。
[橋本曜子]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…富貴,蕗,布貴などとも書く。《越天楽(の曲)》ともいう。箏伴奏の〈越天楽歌物(うたいもの)〉が組歌形式の歌曲に発展した過程を示すものの最古典曲。…
※「越天楽」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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