趙氏孤児(読み)チョウシコジ

デジタル大辞泉 「趙氏孤児」の意味・読み・例文・類語

ちょうしこじ〔テウシコジ〕【趙氏孤児】

中国、元代の戯曲紀君祥きくんしょうの作とされる。春秋時代一族皆殺しにされたしんの趙氏の孤児による復讐物語に基づく。ボルテールの「中国の孤児」はその翻案

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「趙氏孤児」の意味・わかりやすい解説

趙氏孤児
ちょうしこじ

中国、元代の戯曲。四折(せつ)(幕)。紀君祥(きくんしょう)(元代前期の人)作。晋(しん)の霊公の武臣屠岸賈(とがんか)は、対立する文臣趙盾(ちょうとん)一族を殺害し、遺児の行方を追う。医者程嬰(ていえい)は遺児を薬箱に隠し連れ去るが、見張りの韓厥(かんけつ)は屠の無法を憎み、これを見逃して自害する。程は実子を公孫杵臼(しょきゅう)に預け、趙氏の孤児と偽り屠に殺させ、国中の嬰児(えいじ)を殺戮(さつりく)から救う。孤児は皮肉にも屠の養子となり、成長後、程から真相を描いた絵巻をみせられて一族の仇(あだ)屠を捕らえて討つ。18世紀ヨーロッパに伝わり『中国孤児』(ボルテール)に翻案された。『元雑劇三十種』、『元曲選』(後人が第五折を加える)所収。南曲の『趙氏孤児記』(元末明(みん)初の作品、作者不詳)は筋が複雑化し、孤児は父母と再会、幸せな結末に改編されている。

[平松圭子]

『吉川幸次郎解説『趙氏孤児記』(1979・同朋舎出版)』

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改訂新版 世界大百科事典 「趙氏孤児」の意味・わかりやすい解説

趙氏孤児 (ちょうしこじ)
Zhào shì gū ér

中国元代の戯曲。4折(幕),ただし《元曲選》本は5折。作者は紀君祥。春秋時代,晋の家老趙朔(ちようさく)は同僚の屠岸賈(とがんこ)のために一族皆殺しにあうが,生まれたばかりの遺児が,3人の義士の生命を賭した庇護によって毒牙をのがれ,成人のあかつき復仇する。《史記》や《説苑(ぜいえん)》などに見える史実にもとづく。雑劇形態の4段構造がみごとに生かされた元曲の傑作で,無名氏によって南戯にも改編され,18世紀にはフランス語訳や英訳が上梓され,さらに,ボルテールの翻案劇まで現れている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「趙氏孤児」の意味・わかりやすい解説

趙氏孤児
ちょうしこじ
Zhao-shi gu-er

中国,元の戯曲。紀君祥の作。『史記』の趙世家などにみえる春秋時代晋の将軍屠岸賈 (とがんこ) の故事を脚色,趙氏の最後の1人まで殺そうとする屠と,身を犠牲にしてそれを守り抜く忠臣との緊張を,ゆるみない筆致で描いた元曲中の傑作。 18世紀に英,仏訳されてヨーロッパにも紹介された。

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世界大百科事典(旧版)内の趙氏孤児の言及

【中国学】より

…翌年にはオランダで縮刷版が出,続いてイギリスで英語版が出された。また本書で翻訳された唯一の文学作品たる元曲《趙氏孤児》は,まもなく中国びいきのボルテールによって翻案され,55年に《中国の孤児》と題してパリで上演されたのであった。 19世紀に入ると,フランスを最初として,ヨーロッパの主要大学に中国学の講座が設けられ,中国研究を専門とする学者が輩出するにいたった。…

※「趙氏孤児」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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