日本大百科全書(ニッポニカ) 「輻輳」の意味・わかりやすい解説
輻輳
ふくそう
眼前の1点に両眼の視線を集中させる機能をいい、輻湊とも書き、収斂(しゅうれん)(収束)ともいう。正中線上の1点を注視するときは対称的で、両眼が両内直筋の収縮で内転することによっておこるが、正中線以外の1点、たとえば側方を注視するときは非対称的で、一側の内直筋と他側の外直筋が収縮して内転と外転をおこす。この輻輳運動と同時にピントをあわせるため、水晶体の調節が行われるとともに瞳孔(どうこう)の縮小がおこる。この反射を輻輳反射という。また、正中線上の注視点をそのまましだいに目に近づけていき、輻輳できる最大努力線上の距離を輻輳近点といい、健常眼で6~8センチメートルぐらいである。これ以上近づけると、両眼は内転することなく、かえって外方に向いてしまう。輻輳運動をつかさどる中枢は、中脳水道下の動眼神経内直筋核(ペルリヤ核)といわれており、中枢神経系の疾患(パーキンソン症候群や中脳の疾患など)があると、輻輳近点が遠ざかったり、ひどいときは遠視時に外斜視になったりする。
[大島 崇]