大道芸の旧称。人が大勢集まる町角や道端,寺社の境内などで行ったもので,辻能,辻放下(つじぼうか),辻狂言,辻談義,辻咄,辻講釈,軽口物真似などがある。野天で演じたものと小屋掛けのものとがあった。
辻能は葭簀(よしず)張りの小屋掛けで元禄時代に起こり,江戸時代後期まで続いた。能楽が武士階級独占のものであったのに対して,これはいってみれば市民の能楽趣味を満足させる,大衆的な能芝居であった。一座は小人数で,役者も囃子方も少なく,一人二役で演ずることもあった。これは本座から落伍したものが多かったからである。1740年(元文5)に大坂で刊行された《活玉集(いくたましゆう)》の狂歌に〈生玉社内能 シテワキも鼓太鼓も人すくな能いそがしき小はやしかた哉 貞堂〉とある。尾張藩士の小寺(こでら)玉晁著《見世物雑志》にも辻能の記事が見える。辻放下(放下(ほうか))は路傍で奇術や曲芸を演じて見せた。辻狂言は元禄期に盛り場の空地などで人寄せをして歌舞伎の名優のまねをして見せたが,江戸時代後期には門付(かどづけ)芸となり,数人で芝居事をした。辻談義は,もとは僧の辻説法のことで,それがしだいに芸能化して辻咄となった。人の群集するところに席を設け,聴き手は床几に腰をおろしたり,立ったままで聴いたりした。辻講釈(講談)は野天で行うものと葭簀張りの小屋掛けとがあった。軍談読み,神道講談などが盛行し,元禄のころから江戸時代を通じて行われ,明治中期にまで及んだ。街を流して歩き,要望があると立ちどまって演じたものもある。軽口物真似は,江戸後期に役者の声色(こわいろ)をまねる大道芸として人気があった。
→大道芸 →辻
執筆者:関山 和夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…繁華な大道や街頭,また仮設の掛け小屋などで行われるさまざまな芸能の総称。〈辻芸〉とも呼ばれる。
[日本]
ほとんどすべての芸能は,その発生期においては屋外の大地の上で行われており,むしろ芸能にあっては,長く〈屋外の芸〉もしくは〈大道の芸〉という芸態が当然のことであった。…
※「辻芸」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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