路傍で道行く人に説法すること。辻談義ともいう。現代でいえば街頭布教にあたる。古代・中世には〈辻説法〉の語はみられない。僧侶の伝記絵巻などにも屋内説法の図はみられるが,屋外説法の図はない。近世になると,《信長公記》や仮名草子,さらに近松門左衛門の作品などに辻談義,辻談義僧があらわれる。これらは道行く人に説法して金銭をうけており,芸能化の傾向を示している。日蓮の辻説法は著名であるが,その事実は確認できず,16世紀に作られた日蓮の伝絵にもみえない。近世末期日蓮宗で,〈繰(く)り弁〉と称して日蓮の伝記などを独特な口調で語る説法が行われ,このなかに辻説法のことがみえてくる。明治時代に日蓮独特の布教法として強調され,田中智学は鎌倉小町にその顕彰碑を立て,森鷗外に一幕物の歌舞伎《日蓮聖人辻説法》(1904初演)があり,日本画家野田九浦は1907年日蓮辻説法の図を描いた。
執筆者:高木 豊
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
敵を欺くために、自分の身や味方を苦しめてまで行うはかりごと。また、苦しまぎれに考え出した手立て。苦肉の謀はかりごと。「苦肉の策を講じる」...