近衛信尹(読み)コノエノブタダ

デジタル大辞泉 「近衛信尹」の意味・読み・例文・類語

このえ‐のぶただ〔コノヱ‐〕【近衛信尹】

[1565~1614]安土桃山時代公卿前久さきひさの子。初名、信基、のち信輔。号、三藐院さんみゃくいん。書にすぐれ、その書風近衛流とよばれる。寛永三筆一人日記三藐院記」がある。

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精選版 日本国語大辞典 「近衛信尹」の意味・読み・例文・類語

このえ‐のぶただ【近衛信尹】

  1. 安土桃山・江戸初期の公卿。書家。近衛流(三藐院流(さんみゃくいんりゅう))の祖。前久の子。法号三藐院左大臣関白、氏の長者となり、准三后に任じられる。御家流の道澄流を学び、上代様を基にして一派を樹立。本阿彌光悦松花堂昭乗とならんで、寛永の三筆と称される。画、和歌もよくした。永祿八~慶長一九年(一五六五‐一六一四

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「近衛信尹」の意味・わかりやすい解説

近衛信尹
このえのぶただ
(1565―1614)

桃山時代から江戸初期にかけての公卿(くぎょう)。本阿弥光悦(ほんあみこうえつ)、松花堂昭乗(しょうかどうしょうじょう)と並んで寛永(かんえい)の三筆の一人。父は前久(さきひさ)(法名は龍山)。初名は信基(のぶもと)、のちに信輔(のぶすけ)と改め、そして30代なかばで信尹と名のった。三藐院(さんみゃくいん)の院号で親しまれる。摂関(せっかん)家の嫡男にふさわしく、21歳ですでに従(じゅ)一位左大臣に上ったが、1594年(文禄3)30歳のとき薩摩(さつま)へ配流となる。先の豊臣(とよとみ)秀吉の朝鮮出兵に従軍しようと肥前名護屋(なごや)の本営に赴いた結果であった。やがて還任(げんにん)し、関白・氏長者となり、三宮に準じられた。彼は書状をはじめ多数の筆跡を残しているが、その力強い運筆による筆線は、潔く、豪快で、その人柄を彷彿(ほうふつ)とさせる。その書風は院号を冠して三藐院流、あるいは近衛流とよばれ、多くの追随者を輩出した。日記『三藐院記』を伝えている。養嗣子(ようしし)信尋(のぶひろ)(後陽成(ごようぜい)天皇第4皇子で、母は信尹の妹)は、信尹に酷似する書を残す。

[尾下多美子]

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朝日日本歴史人物事典 「近衛信尹」の解説

近衛信尹

没年:慶長19.11.25(1614.12.25)
生年:永禄8.11.1(1565.11.23)
桃山時代の公家。父は関白近衛前久,母は家女房。初名は信基。のち信輔,信尹と改名した。三藐院と号す。文禄の役(1592~96)の際,朝鮮に渡るべく独断で肥前(佐賀県)名護屋に乗り込んだが果たせず,後陽成天皇の勅勘をこうむり薩摩(鹿児島県)坊津に配流された。慶長1(1596)年に許され,以後順調に昇進を遂げ,10年には関白・氏長者になった。大徳寺の春屋宗園に参禅し,古渓宗陳や沢庵宗彭らと親交があった。また,茶道,歌道,書をよくしたが,ことに書は「寛永の三筆」のひとりとして知られる。伝統的な青蓮院流書法に,私淑した藤原定家の書風を加え,さらに信尹独自の個性を加味した,力強い筆力で速書きの豪放な書風を確立した。近衛流,三藐院流として,生存中から多くの人々に愛好され,嫡男信尋をはじめとする公家階層のみならず,武将や町人層にまで広まった。<参考文献>小松茂美『日本書流全史』

(島谷弘幸)

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百科事典マイペディア 「近衛信尹」の意味・わかりやすい解説

近衛信尹【このえのぶただ】

桃山時代の公卿(くぎょう),書家。官は関白にまでのぼり,准三后となった。三藐(さんみゃく)院は諡号(しごう)。書は青蓮院(しょうれんいん)流張即之を学んで,低俗に堕していた当時の和様に新生面を開いて三藐院流と称し,後世,本阿弥光悦松花堂昭乗とともに寛永の三筆とうたわれた。

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改訂新版 世界大百科事典 「近衛信尹」の意味・わかりやすい解説

近衛信尹 (このえのぶただ)
生没年:1565-1614(永禄8-慶長19)

安土桃山時代の公卿。関白前久の男。初名信基,信輔。法号三藐院(さんみやくいん)。1577年(天正5)閏7月織田信長の加冠により元服。85年5月左大臣となり関白職をも望んだが,羽柴秀吉にこれを奪われる。94年(文禄3)4月秀吉の上奏により勅勘を受け薩摩に流され,96年9月帰京。1601年左大臣に還任,05年関白,氏長者となる。能書家として知られ,後世,その書風を三藐院流と称して,本阿弥光悦,松花堂昭乗とともに寛永の三筆とたたえている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「近衛信尹」の意味・わかりやすい解説

近衛信尹
このえのぶただ

[生]永禄8(1565).京都
[没]慶長19(1614).11.25. 京都
江戸時代初期の公家,書家。太政大臣前久 (さきひさ) の子。初名は信基のち信輔,さらに信尹と改めた。従一位左大臣兼近衛大将。文禄2 (1592) 年薩摩国に配流されたが,慶長1 (96) 年赦免されて帰京。出家して法名は三藐院 (さんみゃくいん) 。和歌,連歌,書画に長じ,特に書は本阿弥光悦,松花堂昭乗とともに「寛永の三筆」と称され,近衛流 (三藐院流) を完成した。書風は筆当りがきつく,癖の多い男性的なもので,低俗化していた当時の和様書道界に清新の気を与え,一般的にも多くの流布をみた。主要作品『三藐院記』『初瀬山屏風絵賛』など。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「近衛信尹」の解説

近衛信尹 このえ-のぶただ

1565-1614 織豊-江戸時代前期の公卿(くぎょう)。
永禄(えいろく)8年11月1日生まれ。近衛前久(さきひさ)の子。豊臣秀吉・秀次のため関白になれず,天正(てんしょう)20年左大臣を辞す。文禄の役の際,朝鮮にわたろうとして後陽成天皇の怒りをかい,薩摩(さつま)(鹿児島県)に配流(はいる)となる。のちゆるされ,慶長10年関白,氏長者。書にすぐれ「寛永の三筆」のひとりにかぞえられた。慶長19年11月25日死去。50歳。初名は信基,信輔。号は三藐(さんみゃく)院。日記に「三藐院記」。

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旺文社日本史事典 三訂版 「近衛信尹」の解説

近衛信尹
このえのぶただ

1565〜1614
安土桃山〜江戸時代初期の公家・歌人
号は三藐院 (さんみやくいん) 。内大臣・左近衛大将などを歴任したが,文禄の役に従軍を望んだが,勅勘をうけ薩摩に配流。島津義久に厚く遇された。のち許されて帰京,左大臣・関白に昇任した。また歌道や禅風の書画にもすぐれた。

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367日誕生日大事典 「近衛信尹」の解説

近衛信尹 (このえのぶただ)

生年月日:1565年11月1日
安土桃山時代;江戸時代前期の公家
1614年没

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世界大百科事典(旧版)内の近衛信尹の言及

【三筆】より

…ほかには江戸時代に日本へ渡った黄檗(おうばく)宗の3僧,隠元,木庵(もくあん)(1611‐84),即非(そくひ)(1616‐71。諱は如一(によいち),木庵の法弟)を〈黄檗の三筆〉,また近衛信尹(のぶただ)(号は三藐院(さんみやくいん)),本阿弥光悦松花堂昭乗を〈寛永の三筆〉と呼ぶが,この呼名もおそらく明治以降であろうといわれ,1730年代(享保年間)には寛永三筆を〈京都三筆〉と呼んでいる。また巻菱湖(まきりようこ),市河米庵貫名海屋(ぬきなかいおく)(菘翁(すうおう))の3人を〈幕末の三筆〉という。…

【三藐院記】より

…安土桃山時代・江戸初期の公家近衛信尹(のぶただ)の日記。1592年(文禄1)より1606年(慶長11)までの日次記(ひなみき)と1585年(天正13)の〈羽柴秀吉関白宣下記〉以下の別記11点がある。…

【書】より

…伏見宮尊朝法親王は青蓮院流でもとくに尊朝流と呼ぶ名筆で知られる。公卿では青蓮院流から近衛流を創始した近衛前久(さきひさ)があり,とくにその子近衛信尹(のぶただ)は強い筆線で大字の仮名に異色の書風を現出し,三藐院(さんみやくいん)流と称され,江戸初期の本阿弥光悦,松花堂昭乗とともに〈寛永の三筆〉と呼ばれる。その大字屛風は当時盛行した障壁画に伍して和様の書を迫力ある作品にしあげている。…

【坊津[町]】より

…18世紀以降カツオ漁業の基地としても知られ,幕末・明治初期が最盛期だった。また1594年(文禄3)には前左大臣近衛信尹(のぶただ)が坊津へ配流され,2年後赦免されるまで逗留したので,関連した史跡がある。【三木 靖】。…

※「近衛信尹」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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