生前にあらかじめ死後の菩提を祈願して仏事を修すること。没後に他人により行われる追善に対す。逆はあらかじめの意で、預修(よしゅ)ともいう。『灌頂経(かんじょうきょう)』に追善による功徳は全功徳の7分の1が死者に、『地蔵菩薩本願経』にそのすべてが得られると説かれる。逆修の例としては9世紀末菅原道真作の逆修願文が早く、平安後期では大江匡房作の願文にその跡を見ることができる。平安時代の貴族社会では追善仏事のように七七日(四十九日)の日数を当てることが多く、また書写供養した経典や図絵造立した仏菩薩像もそれと大差ないが、追善に比して逆修の功徳の大きさから、上皇や貴族の中には1人で何度も行う例が少なくない。中世になると民間にも流行した。生前に法名や戒名をつけ、位牌や墓石に戒名を朱書し(追善の場合は墨書)、塔婆や板碑に逆修の願意を彫るなどした。また早世した若者の亡魂をとぶらうため、年長者が追善供養をすることも逆修と呼ばれた。
[小原 仁]
『川勝政太郎著「逆修信仰の史的研究」(『大手前女子大学論集6』所収・1972)』▽『池見澄隆著「逆修考―中世信仰史上の論拠と実態―」(『浄土宗学研究14』所収・1981)』▽『伊藤良久著「中世日本禅宗の逆修とその思想背景」(『印度學佛教學研究57(2)』所収・2009)』
生前に逆(あらかじ)め自己の死後の冥福を祈って仏事を営むことをいう。〈逆〉は〈預〉と同義で預(よ)修ともいう。《灌頂随願往生十方浄土経》に死後の追善供養で死者に達する功徳は7分の1と説かれ,日本の葬送習俗に大きな影響を与えた《地蔵菩薩本願経》巻下には,逆修は七分の徳すべてを得ることができると説かれているのをうけて,平安中期以後天皇貴族から民間に至るまで広く行われた。今日では本義から転じて,(1)自身の後生滅罪を願って仏像・仏画を作る,(2)生前に戒名を授けてもらう,(3)その戒名を位牌・墓(寿牌(じゆはい)・寿墓(じゆぼ)という)に刻み文字を朱で埋めておき,死後これをとり除く習俗をさすようになった。
執筆者:藤井 正雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
仏教用語では順修の対として,修行に背き,迷見にとらわれて真理に遠ざかること。一般的には,「灌頂(かんじょう)経」や「地蔵菩薩本願経」の説にもとづき,生前にあらかじめ死後の菩提に資すべき善根功徳(くどく)を修することをいい,預修(よしゅ)ともいう。仏事正当の日をくりあげて仏事を修すること,位牌や石塔の戒名に朱書すること,若く死んだ者のために年長者が冥福を祈り仏事を修することなどもいった。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
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