通潤橋(読み)ツウジュンキョウ

デジタル大辞泉 「通潤橋」の意味・読み・例文・類語

つうじゅん‐きょう〔‐ケウ〕【通潤橋】

熊本県中央部にある灌漑かんがい用水を送るための水路橋上益城かみましき山都やまと町(旧矢部町)にある。長さ75.6メートル、高さ20.2メートル、幅6.3メートル、石管の長さ126.9メートル。サイホンの原理を応用して、橋の上に石造パイプを3列並べた通水管を埋設、中央部にあけた通水孔から放水される。江戸時代末期、時の惣庄屋そうじょうや布田保之助ふたやすのすけ白糸台地の人々の暮らしを良くするために、6キロメートル離れた笹原川から水を引いて造った。国の重要文化財指定されている。

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日本歴史地名大系 「通潤橋」の解説

通潤橋
つうじゆんきよう

五老ごろうたき(轟川)に架けられた水路橋。弘化三年(一八四六)から安政元年(一八五四)にかけて工費一二〇貫、延べ人夫三万人を費やして作られた。単アーチ式の構造で、橋長七五・六メートル、橋幅六・三メートル、高さ二〇・二メートル。サイホン原理を応用した独創的な設計による通水管三本が埋設されている。橋中央部に各通水管の栓があり、放水によって沈殿した土砂を流出させる仕掛けとなっている。国指定重要文化財。

架橋の目的は、谷が複雑に入込んでいるため水利に恵まれない白糸しらいと台地の長野ながの田吉たよし小原こわらくら新藤しんどう白石しらいし犬飼いぬかいなどの村々に用水を送るためで、上流笹原ささわら川から取水、この橋を渡って白石の相藤寺あいとうじまで延長約一三キロ、分水された水路を含めると総延長三〇キロに及ぶ通潤用水が完成し、新開田地四二町以上が得られた。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「通潤橋」の意味・わかりやすい解説

通潤橋
つうじゅんきょう

熊本県中東部、上益城(かみましき)郡山都町(やまとちょう)長原(ながはら)にある一拱(いっきょう)式の眼鏡橋(めがねばし)。国指定の重要文化財。1854年(安政1)矢部手永(てなが)の惣庄屋(そうじょうや)布田保之助(ふたやすのすけ)が、水に恵まれない白糸台地開田のために轟川(とどろきがわ)の渓谷に架けたわが国最大の通水橋で、長さ75.6メートル、幅6.3メートル、高さ20.2メートル、アーチの直径(拱間)28.2メートル。橋の中央部に逆サイホンの原理を応用した3本の通水管が埋設されており、巨大な水圧のかかる通水管は上質の石材をくりぬいた石樋(いしどい)を数多く漆食(しっくい)で連ねてつくりあげてある。また、通水管の四か所には松丸太をくりぬいた木樋(もくひ)がはめ込まれており、内に詰まるごみの取出し口となっているだけでなく、地震の際の緩衝材の役割をも果たしている。空中に巨大な弧を描き、かつ小石の集合のなす造形美は、日本土木技術の秀作の一つといわれている。旧暦8月1日の八朔(はっさく)祭に行われる豪快な放水は、毎年多くの観光客を呼び寄せている。周囲は矢部周辺県立自然公園。

[山口守人]


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デジタル大辞泉プラス 「通潤橋」の解説

通潤橋〔橋〕

熊本県上益城郡山都町にある水路橋。1854年に造られた石造の単アーチ橋。長さ75.6m、幅6.3m、高さ20.2mは日本最大規模。国指定重要文化財。また「通潤用水と白糸台地の棚田景観」として重要文化的景観に、「通潤用水」として農林水産省の疎水百選に選定されている。

通潤橋〔道の駅〕

熊本県上益城郡山都町にある道の駅。国道218号に沿う。付近にある「通潤橋(つうじゅんきょう)」は国の重要文化財に指定。

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世界大百科事典(旧版)内の通潤橋の言及

【石工】より

…戦国時代から桃山時代にかけては城の石垣造営にその技術が重用され,穴生(あのう)(滋賀県)の石工は特に名高い。このほか眼鏡橋(長崎市,1634),通潤橋(熊本県上益城郡,1854)などの石造橋,閑谷(しずたに)学校石塀(備前市,1701)などの石塀,日光東照宮石鳥居(1618)や久能山東照宮廟所宝塔(静岡市,1617)などの宗教建築物,および各地に残る石畳道などはいずれも石工の高い技術をよく示している。江戸幕府の建設担当役所である作事方(さくじかた)では,大棟梁のもとに鍛冶・錺(かざり)などとともに石方を配し,その指揮者は石方棟梁と呼ばれ,建物の基礎,竈(かまど)やこたつの石などの作製を担当した。…

【緑川】より

…矢部町に入ると平家の落人伝説を秘め紅葉が美しい内大臣川を合わせ,矢部四十八滝,五老ヶ滝など多くの滝をかける。上・中流には1847年(弘化4)に架けられた霊台橋(重要文化財)や55年(安政2)に布田(ふた)保之助がオランダの土木技術にもとづいて完成した通水石橋の通潤橋(重要文化財)などの眼鏡橋が多い。中流域の砥用(ともち)町では1971年緑川総合開発の一環として多目的の緑川ダム(総貯水量4600万m3)が建設されている。…

【矢部[町]】より

…一帯が矢部周辺県立自然公園に含まれ,緑仙峡,五老ヶ滝峡谷,内大臣峡などの景勝がある。重要文化財の通潤橋は,1855年(安政2)矢部手永((てなが))の惣庄屋布田(ふた)保之助が築造した緑川の支流轟川にかかる石造のアーチ橋で,2本の水道が通じ,付近の水田をうるおしている。【松橋 公治】。…

※「通潤橋」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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