架橋の目的は、谷が複雑に入込んでいるため水利に恵まれない
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
熊本県中東部、上益城(かみましき)郡山都町(やまとちょう)長原(ながはら)にある一拱(いっきょう)式の眼鏡橋(めがねばし)。国指定の重要文化財。1854年(安政1)矢部手永(てなが)の惣庄屋(そうじょうや)布田保之助(ふたやすのすけ)が、水に恵まれない白糸台地開田のために轟川(とどろきがわ)の渓谷に架けたわが国最大の通水橋で、長さ75.6メートル、幅6.3メートル、高さ20.2メートル、アーチの直径(拱間)28.2メートル。橋の中央部に逆サイホンの原理を応用した3本の通水管が埋設されており、巨大な水圧のかかる通水管は上質の石材をくりぬいた石樋(いしどい)を数多く漆食(しっくい)で連ねてつくりあげてある。また、通水管の四か所には松丸太をくりぬいた木樋(もくひ)がはめ込まれており、内に詰まるごみの取出し口となっているだけでなく、地震の際の緩衝材の役割をも果たしている。空中に巨大な弧を描き、かつ小石の集合のなす造形美は、日本土木技術の秀作の一つといわれている。旧暦8月1日の八朔(はっさく)祭に行われる豪快な放水は、毎年多くの観光客を呼び寄せている。周囲は矢部周辺県立自然公園。
[山口守人]
…戦国時代から桃山時代にかけては城の石垣造営にその技術が重用され,穴生(あのう)(滋賀県)の石工は特に名高い。このほか眼鏡橋(長崎市,1634),通潤橋(熊本県上益城郡,1854)などの石造橋,閑谷(しずたに)学校石塀(備前市,1701)などの石塀,日光東照宮石鳥居(1618)や久能山東照宮廟所宝塔(静岡市,1617)などの宗教建築物,および各地に残る石畳道などはいずれも石工の高い技術をよく示している。江戸幕府の建設担当役所である作事方(さくじかた)では,大棟梁のもとに鍛冶・錺(かざり)などとともに石方を配し,その指揮者は石方棟梁と呼ばれ,建物の基礎,竈(かまど)やこたつの石などの作製を担当した。…
…矢部町に入ると平家の落人伝説を秘め紅葉が美しい内大臣川を合わせ,矢部四十八滝,五老ヶ滝など多くの滝をかける。上・中流には1847年(弘化4)に架けられた霊台橋(重要文化財)や55年(安政2)に布田(ふた)保之助がオランダの土木技術にもとづいて完成した通水石橋の通潤橋(重要文化財)などの眼鏡橋が多い。中流域の砥用(ともち)町では1971年緑川総合開発の一環として多目的の緑川ダム(総貯水量4600万m3)が建設されている。…
…一帯が矢部周辺県立自然公園に含まれ,緑仙峡,五老ヶ滝峡谷,内大臣峡などの景勝がある。重要文化財の通潤橋は,1855年(安政2)矢部手永((てなが))の惣庄屋布田(ふた)保之助が築造した緑川の支流轟川にかかる石造のアーチ橋で,2本の水道が通じ,付近の水田をうるおしている。【松橋 公治】。…
※「通潤橋」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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