仏伝の一種。南朝宋(そう)(420~478)の求那跋陀羅(ぐなばっだら)訳。4巻。題名の意味は、仏(釈迦(しゃか))の過去世の事蹟(じせき)と、現在世の事蹟(成道(じょうどう)、転法輪(てんぼうりん)など)との間に因果関係のあることを教えるもので、これは譬喩(ひゆ)文学(アバダーナ)の一般的形式である。本経は、舎衛国(しゃえいこく)の祇園精舎(ぎおんしょうじゃ)において、仏が自ら過去世に善慧(ぜんえ)仙人として普光如来(ふこうにょらい)に散華(さんげ)供養して成仏の予言を受けたことを語り、ついで、入胎、出胎、出家、降魔(ごうま)、成道、転法輪、五比丘(びく)をはじめとする弟子衆の教化によって1250人の阿羅漢(あらかん)のできたことなどを説き、最後に善慧仙人以下、過去世の登場人物と現在世の諸人物との対応、同一性を明かして終わる。『開元録(かいげんろく)』によれば、本経の漢訳は6種あり、そのうち『修行本起経(しゅぎょうほんぎきょう)』『太子瑞応本起経(たいしずいおうほんぎきょう)』が現存する異訳であるというが、かならずしも同一内容とはいえない。本経は後世、絵因果経として仏伝の画を付して広く流布された。
[高崎直道]
宋の求那跋陀羅(ぐなばつだら)訳。4巻。仏陀が過去世に善慧仙人として普光仏のもとに生まれ,出家して菩薩の道を修行して兜率天(とそつてん)に生まれかわり,この世に降臨,誕生してからの王子としての生活や,四門出遊・出家,降魔(ごうま)・成道(じょうどう),初転法輪・五比丘・三迦葉(かしょう)・舎利弗(しゃりほつ)・目蓮・大迦葉への教化(きょうけ)など,仏陀の伝記が記されている。奈良時代以降,絵因果経が描かれ広く普及した。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
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…《過去現在因果経》に,その経意をあらわす絵を加えた絵巻をいう。《過去現在因果経》は,5世紀に求那跋陀羅(ぐなばつだら)によって漢訳された全4巻の仏伝経典で,釈迦の過去世(前世)の善行(本生譚すなわちジャータカ)と現世での事跡(仏伝)を記し,過去世に植えた善因は決して磨滅することなく果となって現在に及ぶことを説いている。…
…本尊は1667年(寛文7)に焼失したが,光背は断片的ながら遺存する。これら変相図の大画面に対して《過去現在因果経》がある。釈迦の伝記〈仏伝〉を説いたもので,下段に経文,上段に対応する絵を,朱,丹,群青,雌黄,鉛白などの原色を用いて素朴に描き,絵巻形式の説話画として,のちの絵巻物への展開を示唆して注目される(絵因果経)。…
※「過去現在因果経」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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