絵因果経(読み)えいんがきょう

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

絵因果経
えいんがきょう

過去現在因果経』に絵を加えたもの。経巻を2段に区切って下段経文を,上段にはこれに対応する絵を描き入れて全8巻に仕立てたもの。6世紀末~7世紀初期に中国で始った。奈良時代以降,日本でもこれら中国の原本に基づいて盛んに制作された。8世紀中頃の遺品に上品蓮台寺本 (国宝) ,醍醐寺報恩院本 (国宝) ,益田家旧蔵本,東京芸術大学本 (国宝) などがあり,古朴な表現のうちによく経意を表わしている。その後のものでは益田家旧蔵本 (9世紀) ,聖徳寺本 (12世紀後半) ,「新因果経」と呼ばれる建長6 (1254) 年の年記をもつ根津美術館本などが伝存する。

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百科事典マイペディアの解説

絵因果経【えいんがきょう】

《過去現在因果経》に説く釈迦本生譚(ほんじょうたん)(ジャータカ),仏伝を描いた絵巻。経文を下段に,上段にそれに対応する絵を描く。新旧2種あり,古因果経は奈良時代の作で,書は奈良朝風,絵は中国の六朝風。上品(じょうぼん)蓮台寺蔵,醍醐報恩院蔵,東京芸術大学蔵のものなどがある。新因果経は鎌倉時代の作で,1254年慶忍(けいにん)とその子聖衆丸(しょうじゅまる)が描いた根津美術館蔵のものが有名。

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世界大百科事典 第2版の解説

えいんがきょう【絵因果経】

《過去現在因果経》に,その経意をあらわす絵を加えた絵巻をいう。《過去現在因果経》は,5世紀に求那跋陀羅(ぐなばつだら)によって漢訳された全4巻の仏伝経典で,釈迦の過去世(前世)の善行(本生譚すなわちジャータカ)と現世での事跡(仏伝)を記し,過去世に植えた善因は決して磨滅することなく果となって現在に及ぶことを説いている。絵巻では,紙面を上下2段に分け,下段は経文を1行8字にして書き,上段にはこれに対応する情景を連続的に描きならべ,全8巻に仕立てている。

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大辞林 第三版の解説

えいんがきょう【絵因果経】

「過去現在因果経」の内容を絵解きしたもの。経文を下段に、絵を上段に書く。過去現在因果経絵巻。因果経絵巻。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

絵因果経
えいんがきょう

釈迦(しゃか)の本生譚(ほんしょうたん)(釈迦の前世における物語)と仏伝(釈迦のこの世に生まれてからの一代記)を説いた『過去現在因果経』に絵を加え、経文の絵解きをしたもの。経巻の料紙を上下2段に分けて、下段に8字詰めの経文を書写し、上段にこれに対応する絵を描いている。『過去現在因果経』は本来四巻本であるが、『絵因果経』はその各巻を上下2巻に分け、八巻本として世に行われていたと思われる。現存する主要なものとしては、奈良時代(8世紀)制作のものに上品蓮台寺(じょうぼんれんだいじ)本(第2巻上)、報恩院本(第3巻上)、MOA美術館本(第4巻上)、東京芸大本(第4巻下)などがある。このうち報恩院本は軸に近く「□月七日写経生従(じゅ)八位」の墨書があるので、当時の写経司の制作と推定、天平(てんぴょう)(729~749)ごろの作であることがわかる。以上の作品は書風、画風に多少の違いはあるが、いずれも経文は当時の写経体、絵は中国六朝(りくちょう)風の古体で書かれている。楼閣、山、樹木など型で押したように類型的に描かれ、墨がきの輪郭による簡略な象形に、丹(たん)、朱、緑、青、黄、白などの原色を施し、描写はすこぶる素朴である。また連続式構図で描かれ、樹木、岩石、土坡(どは)などで前後の場面の段落をつけている。また鎌倉時代(13世紀)制作のものに根津美術館本(第2巻下)、大東急記念文庫本(第3巻下)などが現存し、ともに1254年(建長6)に慶忍(または慶恩)とその子聖衆丸(しょうじゅまる)が描いたことが奥書で知られる。画風は色彩も淡泊、描線も軽妙で、奈良時代のものとは大いに趣(おもむき)を異にする。なお両者を区別して、奈良時代のものを「古因果経」、鎌倉時代のものを「新因果経」とよんでいる。[村重 寧]
『『新修日本絵巻物全集1 絵因果経』(1977・角川書店)』

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世界大百科事典内の絵因果経の言及

【変相図】より

…法隆寺金堂の浄土変や当麻曼荼羅(観経変)などは代表的な作例である。一方,変が経典の絵画化であるとすれば,最も端的な作例として《過去現在因果経》(《絵因果経》)がある。仏伝を説くこの経典の下半には経文を書写し,上半にはそれに対応する情景を逐次接続させて連続した絵画をなしており,のちの絵巻物の原理に通ずるものがある。…

※「絵因果経」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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