県召除目(あがためしのじもく)で国司に任ぜられても、任国には赴任せず在京すること。遙授ともいい、得分のみを得るために、公卿(くぎょう)などが守(かみ)を兼ねる場合は、その代理として目代(もくだい)を任国に下向させ、国務をとらせる例であった。中級官吏でも奉公の功労により国司を兼任する者もある。これは、役得の多い地方官につかせて優遇しようとするもので、この場合も遙任となることが多い。一般に受領(ずりょう)が正官(せいかん)であるのに対し、遙任国司には権官(ごんかん)が多い。遙任のことは、766年(天平神護2)員外(いんがい)国司の赴任をいっさい禁止したのに始まる。この員外国司は774年(宝亀5)に廃止されたが、延暦(えんりゃく)年間(782~806)以降、権任(ごんにん)国司が増加した。国守不在の国衙(こくが)は留守所(るすどころ)といわれた。
[渡辺直彦]
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