目代(読み)もくだい

日本大百科全書(ニッポニカ)「目代」の解説

目代
もくだい

日本の古代末・中世において、地方官たる国守代官として任国に下向(げこう)し、在庁官人を指揮して国務を行う人。本来は国が私的に設けた政務助者の総称であり、11世紀前半までは人数も1人とは限らず、分配(ぶはい)目代、公文(くもん)目代などと称して国務を分掌していた。それが、11世紀後半に各国に留守所(るすどころ)ができ、その国の在地の領主である在庁官人が実質的に国務を切り回し、国守が遙任(ようにん)と称して任国に下向しなくなると、留守所の統轄者たる庁目代だけが目代といわれるようになる。目代はその事務能力によって登用されたので、『今昔(こんじゃく)物語』によると傀儡子(くぐつ)出身の目代もいた。のち国守の目代だけでなく、一般に正員のかわりに現地で執務する人を目代というようになった。

[大石直正]

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精選版 日本国語大辞典「目代」の解説

もく‐だい【目代】

〘名〙
① 平安中期以降、国守の代理人。任国に下向しない国守の代わりに在国して執務する私的な代官。眼代(がんだい)。めしろ。
※太神宮諸雑事記(11C中か)「志摩守目代三河介伴良雄」
② 鎌倉以降、その職の正員(しょういん)の代わりに現地で執務する者。
※建久元年内宮遷宮記(1190)「九月〈略〉十六日〈略〉于時任先例祭主目代封可古殿歟之由」
③ 江戸時代、代官のこと。
※虎明本狂言・鍋八撥(室町末‐近世初)「罷出たる者は、此所の目代で御ざある」
④ 代理人。身代わり
※社会百面相(1902)〈内田魯庵〉猟官「伯爵の目代(モクダイ)とし任官して呉れ」

め‐しろ【目代】

〘名〙 (主人の耳目の代わりをする者の)
① 官職の正員(しょういん)の代わりに執務する者。特に、平安末期以降、任国に下向しない国守の代わりに在国して執務する者。もくだい。〔色葉字類抄(1177‐81)〕
② 主人に代わって事を処理する人。代理人。
※春のみやまぢ(1280)四月一〇日「証人のために、女房一人・男壱人両方にとりかへてめしろたるべし」
③ めあて。てがかり。目途(めど)
※歌舞伎・五大力恋緘(評釈江戸文学叢書所収)(1793)大切「此うち彌助、ソロソロ逃げようとする『詮議の目代(メシロ)』ト戻し、突きやる」

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百科事典マイペディア「目代」の解説

目代【もくだい】

平安・鎌倉時代の地方官の代理人。室町期以後広く代官の意。遥任(ようにん)や知行国の制が盛んになると,国司・知行国主はその子弟家人(けにん)を目代として任国に派遣,国務を代行させた。目代は在庁官人を率い地方で実権を振るった。
→関連項目下文春木荘

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「目代」の解説

目代
もくだい

律令制下の地方官の代官。もともと人の耳目に代る意味で,国司の秘書的役割を行う者に対する称であったが,遙任知行国の制が盛行すると,国司に代って任国におもむき,在庁官人を率いて国務を執行する者をさすようになった。国司制度の衰退とともに消滅

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デジタル大辞泉「目代」の解説

もく‐だい【目代】

《人の目に代わる意》
代理人。身代わり。
「立派な会社の—で運動するなら」〈魯庵社会百面相
平安・鎌倉時代の国守の代理人。国守の代わりに任国に赴いて執務する私的な代官。眼代がんだい。めしろ。
室町時代以降、代官のこと。

め‐しろ【目代/眼代】

もくだい(目代)2」に同じ。
代理人。また、監督。後見。
「よそながら主君の—となり」〈読・稲妻表紙・一〉

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旺文社日本史事典 三訂版「目代」の解説

目代
もくだい

平安・鎌倉時代の国司の代官で,私設の役人
遙任 (ようにん) ・知行国制が発達すると国司の子弟・家人が目代として任国に下り,在庁官人を率いて国務を代行するようになった。鎌倉時代以降,国司制度の衰退とともに消滅した。

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世界大百科事典 第2版「目代」の解説

もくだい【目代】

国司制度上,現地に赴任しない国守が任国支配のために設けた私設の代官。鎌倉時代の法制解説書《沙汰未練書》にも〈目代トハ,国司代官也〉と見えている。目代は元来,国司の四等官の守(かみ),介(すけ),掾(じよう),目(さかん)のうち第四等官の目の代官の意味ともいわれる。国司の遥任制が一般化する中で,国守はその一族,子弟などを目代に任じ,任国支配を委任し,当該国の行政にあたらせた。目代の名称はすでに奈良時代にも見られるが,実質的には遥任制が顕著となる平安後期に多く散見する。

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世界大百科事典内の目代の言及

【在庁官人】より

…《今昔物語集》に〈守に此の由を申しければ忽(たちま)ちに在庁の官人を召して,蔵を開けさせて見れば……〉と見える例をはじめ,当該期の地方行政の運営者としての彼らの活動を示す史料は少なくない。 在庁官人は多く惣判官代,惣大判官代あるいは判官代などの肩書を有し,国守の私吏たる目代とともに留守所を構成する。目代は一般に私設代理人として事務にたんのうなものが重用され,国司の交替にともない遷替するのが原則であるが,在庁官人は多く土豪の任用にかかる。…

※「目代」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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