伊勢神宮で二〇年に一度行なわれている式年遷宮が有名であるが、賀茂社・春日大社・住吉大社・香取神宮などでも、同様にほぼ二〇年ごとの遷宮が行なわれている。この年限については、諸説あるが、神事に従事する場合には、ことさらに精進潔斎が求められるところから、神の降臨にふさわしい、清新な神座を用意するというのが本義かと思われる。
神体を遷(うつ)し奉ることをいう。とくに伊勢(いせ)神宮20年一度の式年遷宮をさしていう場合が多い。遷宮と遷座とは同じ意味であるが、一般神社の場合は遷座祭といい、伊勢神宮の遷宮祭と区別した。伊勢神宮では臨時に行う神殿修理のための遷宮のほか、20年一度の式年遷宮制が天武(てんむ)朝(673~686)に定められ、次代の持統(じとう)朝(686~697)から恒例化した。神殿は社殿地の東西に交互に建て替えられ、旧殿から新殿へ神体を遷す祭儀が執り行われてきた。20年という期間は、木造建築の耐久年限にかかわるとともに、人間の1世代に相当し、大神(おおかみ)の新たな生まれ変わりを意味している。式年遷宮祭は天皇即位後に行われる大嘗祭(だいじょうさい)と並ぶ朝廷の重儀であり、平安末期には全国一律に遷宮費用を捻出(ねんしゅつ)するため役夫工米(やくぶたくまい)が課せられた。中世後期に一時中絶はあったが、1973年(昭和48)までの間に60回を数えた。最新遷宮は2013年、62回目が行われている。遷宮の斎行される8年前から諸祭儀が始まり、山口祭(やまぐちさい)、木本祭(このもとさい)、御杣始祭(みそまはじめさい)、御樋代木奉曳式(みひしろぎほうえいしき)、御船代祭(みふなしろさい)、御木曳初式(おきひきぞめしき)、木造始祭(こづくりはじめさい)、仮御樋代木伐採式(かりみひしろぎばっさいしき)、鎮地祭(ちんちさい)、立柱祭(りっちゅうさい)、上棟祭(じょうとうさい)、甍祭(いらかさい)、心御柱奉建(しんのみはしらほうけん)などを終わって遷御(せんぎょ)となる。遷御は現在、内宮(ないくう)が10月2日、外宮(げくう)が10月5日に行われる。
[岡田荘司]
…伊勢神宮では15,16世紀の戦乱の世に一時途絶えたこともあるが,今日も20年ごとに行われており,1973年の造替は60回目とされる。ここでは東西に隣接して同じ広さの敷地があり,遷宮(遷宮・遷座)に先立って,空いている方の敷地に新しい社殿をつくり,遷御の儀が終了してから古社殿は取りはらわれる。仁科神明宮(長野県大町市)には永和2年(1376)銘以後,20年ごとの棟札が保存してあり,江戸時代末までは乱れることなく20年ごとに造替されていた。…
…神宮・神社の遷宮に関する記録。神社では社殿の古くなるとともに新社殿を造営して遷宮したり,また伊勢の神宮その他一部の神社のように一定の年数ごとに新社殿を造営しての式年遷宮,その年数を待たず焼亡などによる臨時遷宮,雨もり修理などの間の仮殿遷宮等をする。…
…神殿の改修造営に際して,神霊を移すこと。この場合,遷宮は伊勢神宮にのみ用い,一般神社では遷座といい,その祭儀を遷宮祭,遷座祭という。伊勢神宮では,7世紀後半の天武朝以来20年に1度〈式年遷宮〉が行われ,中世戦乱期に一時遅延したが,現在まで続いて行われている。…
※「遷宮」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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