老年、幼年、身体障害または病気(けが、泥酔、薬物等の影響を含む)のために扶助を必要とする者を、保護のない状態において、その者の生命・身体を危険にする犯罪。保護責任者以外は、安全な場所から危険な場所に(または危険な場所からより危険な場所に)移す行為が、いわゆる単純遺棄罪として、処罰(1年以下の懲役)の対象となる(刑法217条)。一方、保護責任を有する者の場合には、危険な場所に移す行為だけでなく、置き去りにする行為、十分な食事を与えないなど生存に必要な保護を与えない行為も、保護責任者遺棄罪として、処罰(3月以上5年以下の懲役)の対象となる(刑法218条)。保護責任者とは、幼い子供に対する親権者やベビーシッター、介護施設の入所者に対する施設職員など法令または契約に基づいて責任を有する者のほか、覚醒(かくせい)剤を注射して相手を錯乱状態にした者のように条理上保護責任があるとされる者も含まれる。単純遺棄罪または保護責任者遺棄罪を犯して人を死傷させた者は、遺棄等致死傷罪として、傷害の罪と比較して重い刑で処断される(刑法219条)。致傷は15年以下の懲役(保護責任者遺棄による場合は3月以上15年以下の懲役)、致死は3年以上20年以下の有期懲役となる。死傷の結果を認識、認容していれば、故意犯としての殺人罪、傷害罪が成立する。
一方、交通事故のひき逃げに関しては、運転者が負傷者を救護する義務が法定されていることを理由に保護責任者遺棄罪の成立が認められた例もあるが、通常の逃走では、本罪を適用することなく、道路交通法の救護義務違反の罪でもっぱら処断されている。2007年(平成19)の道路交通法改正により、事故を起こした運転者の場合、同罪は10年以下の懲役または100万円以下の罰金に引き上げられている(道路交通法117条2項)。
[田村正博 2021年1月21日]
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… また近時,要扶養者に最低限の金銭的保護を与えながら,身体的な介護や精神的な結びつきを拒否するという〈遺棄状態〉のケースが顕在化している。このような〈遺棄状態〉は,夫婦間だけでなく,老親と子,未成熟子とその親の間にもひろがっており,それらのなかには,刑法上の遺棄罪に該当する事例も少なくないと考えられる。こうした〈遺棄状態〉を生み出す社会的背景として,貧困と人間関係のこじれの2要素があげられる。…
※「遺棄罪」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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