那智山経塚(読み)なちさんきようづか

日本歴史地名大系 「那智山経塚」の解説

那智山経塚
なちさんきようづか

[現在地名]那智勝浦町那智山 大平

那智大滝への参道入口の西側、俗に沽池からいけまたは金経門きんけいもんとよばれる地域から発見された。この辺りは熊野那智大社の所有林と飛滝神社の境内の一部で、規模の大きさとその埋納遺物の多彩さにおいて全国有数の仏教(修験道)遺跡。那智山金経門経塚ともいう。大正七年(一九一八)陶磁の蓋、金属の塔形など二五九点が発見された。その後、同一三年、昭和五年熊野那智大社の手によって四回発掘調査が行われ、金銅仏仏具三昧耶形経筒・古鏡など多数発見された。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「那智山経塚」の意味・わかりやすい解説

那智山経塚
なちさんきょうづか

和歌山県東牟婁(ひがしむろ)郡那智勝浦町那智山字大平の飛滝権現(ひろうごんげん)への参道を中心に存在する経塚を含む遺跡の総称。遺跡は、経塚と仏像密教法具が埋納された修法(しゅほう)遺構の複合遺跡である。経塚関係の遺物としては、仁平(にんぴょう)3年(1153)銘を最古とする藤原時代の多数の経筒が出土している。修法関係の遺物として仏像、鏡像、懸仏(かけぼとけ)、鏡鑑、塔(滑石五輪塔、銭弘俶(せんこうしゅく)塔)、仏法具、玉、銭貨、陶器などがあり、なかには一部経塚遺物も混在している。これらの遺物類は、沙門行誉(しゃもんぎょうよ)の滝本岩窟(たきもとがんくつ)への埋納事情と目録が記載された『那智山滝本金経門(きんけいもん)縁起』(1130=大治五ころ)と一致し、また、三昧耶会(さんまやえ)(金剛界九会曼荼羅(くえまんだら)の1)の図式が出土遺物によって確認されたことは重要である。

[坂詰秀一]

『東京国立博物館編・刊『那智経塚遺宝』(1985)』


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「那智山経塚」の意味・わかりやすい解説

那智山経塚
なちさんきょうづか

和歌山県東牟婁郡那智勝浦町,熊野那智大社飛滝神社参道のそばに営まれた,平安時代から室町時代にわたる大規模な経塚群。 1918年と 30年に約 60個分の経筒をはじめ,鏡,古銭などが多数発見されたが,ほかに奈良時代の仏像,平安時代の三昧耶形,大壇具など,特殊な遺物も出土している。遺構については不明な点が多かったが,68~69年に発掘調査が行われ,巨石をめぐって営まれた経塚と,方形基壇状に造られた経塚とに大別され,その他,修法の遺構があったことなども明らかにされている。

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