都市経営(読み)としけいえい

改訂新版 世界大百科事典 「都市経営」の意味・わかりやすい解説

都市経営 (としけいえい)

都市経営理念は,地方自治体を政策主体として,陳腐化した官庁労務・人事・組織・財務管理の殻を破って,地方自治権をも活用し,積極的に私経済への介入民間企業との競合,官庁方式からの脱皮を行いながら,都市の成長,社会の公平を図っていくことにある。その政策理念の背景には,都市活動によってもたらされる社会的な成果物としての資金,空間,エネルギーなどを,地方公共団体のなかに取り込み,公的施策を通じて地域社会に還元することによって,社会福祉の極大化を図っていこうとする公共経済的発想がある。そのような意味で,企業経営と同じ方式で収益性を確保しようとする減量経営とは異なる。具体的には公共デベロッパーとして海面埋立,宅地造成,工業用地建設などを行う一方,交通企業,地下街・再開発ビル,有料道路,住宅分譲などを経営する。これらの事業経営は開発利益の社会的吸収の一方策である。また内部経営としては,官庁方式の枠をこえて,資金調達のため外郭団体の設立,外債・コミュニティ・ボンド(住民引受債)の発行をし,資金の活用として基金積立,第三セクターへの出資,関連団体への貸付金などの方式を活用する。このような企業的方式の導入にあたっては,主として地方公社財団法人,民間団体,住民組織などを通じての外部委託・間接処理方式によって民間エネルギーの活用を図る。さらに宅地開発負担,不均一超過課税などの地方自治権の発動によるいわゆる政策経営の展開を通じて,私的経済の歪みの是正を図るようにする。歴史的には,このような都市経営は片山潜《都市社会主義》(1903),安部磯雄《都市独占事業論》(1911),池田宏《都市経営論》(1922),ビアードCharles Austin Beard《東京市政論》(1923),関一《都市政策の理論と実際》(1936)等にその思想・施策をみることができる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「都市経営」の意味・わかりやすい解説

都市経営
としけいえい

自治体行政を単なる地方行政としてではなく,地域行政,地域経営ととらえようとする考え方。民間委託を進め小さな自治体を目指そうとする減量経営の考え方と,自治体行政に民間の資金や技術を活用し第三セクターを介在させながら町づくりを進めようという考え方の2つの流れがある。いずれもマネージメント (経営) という考え方を自治体運営や町づくりに適用していこうというもので,今後の自治体行政における新しい行政姿勢として注目される。

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