江戸中期の心学(しんがく)者石田梅岩(ばいがん)の主著。4巻16段の問答体よりなり、石門(せきもん)心学の原理論を説いた書。1739年(元文4)刊。第1巻は「都鄙問答ノ段」以下5段、梅岩の思想体験と学問観を中心に、「孝」の道をはじめ四民の道を論じ、総論とする。第2巻は「鬼神ヲ遠(とおざく)ト云事(いうこと)ヲ問(とう)ノ段」以下4段、神儒仏諸思想の一致を説く。なかでも「或(ある)学者商人ノ学問ヲ譏(そしる)ノ段」は、商人の道が士農工の道と同等で普遍的人間の道として、時代の通念であった賤商(せんしょう)論に反論した注目すべき段である。第3巻は全巻「性理問答ノ段」にあてられ、梅岩独自の心学哲学が展開されている。第4巻は「学者行状心得難(こころえがた)キヲ問ノ段」以下6段、学者、僧侶(そうりょ)、医者、商人のあり方や信仰の問題など、多方面にわたる具体例について梅岩の主張を明らかにする。同書は全巻を通じて梅岩の誠実な人格と思索がうかがわれ、近世中期の庶民が自覚した哲学を示す代表的著作として注目すべきである。
[今井 淳]
『『日本古典文学大系 97 近世思想家文集』(1966・岩波書店)』▽『『日本の名著 18 富永仲基・石田梅岩』(1972・中央公論社)』▽『石川謙著『石田梅岩と都鄙問答』(岩波新書)』
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心学書。4巻。石田梅岩(ばいがん)著。1739年(元文4)成立。田舎からでてきた者が京都の梅岩を訪れ質疑応答する体裁をとり,16段からなる。朱子学的理解をふまえて人間存在の基軸である「性」を洞察し,それにもとづく日常の具体的な実践を「形に由(よ)る心」によって説明する。その主張は現実の身分秩序自体を否定するものではないが,士農工商の相違を社会的役割の相違に限定し,四民の人間的平等を強調した。とくに当時根強く存在した賤商観や抑商論に反対し,商人の人間としての尊厳を擁護し,商業活動や利潤追求の正当性を強く訴えた点で,石門心学史・近世思想史において重要な位置を占める。「日本古典文学大系」「石田梅岩全集」所収。
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…月に3回商家の主人たちを集めてゼミナールを開き,弟子の養成に努めた。主著《都鄙問答(とひもんどう)》はそのときの問答の抜粋である。倹約を正直の徳と結び,すべての道徳の基礎においた。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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