食品を燃焼して灰にした場合に,その灰の中にリンP,硫黄S,塩素Clなどの酸性を示すような元素を多く含む食品を酸性食品と呼んでいる。食品の酸度は,食品100gを燃焼して灰にし,その灰分を一定の条件下で水に溶解し,水溶液中の酸を中和するのに要する1規定のアルカリのcc数をもって表している。魚や貝,肉などの動物性タンパク質は酸度が高い。これはタンパク質に硫黄を多く含むためである。豆類などのタンパク質は,リンを多く含んでいるので酸性食品である。鶏卵の卵黄はリン脂質やリンタンパク質を多く含むので酸性である。一方,卵白はアルカリ性であるが,卵一個として考えた場合には,酸性食品になるという。
酸性食品を摂取することは好ましくないなどとよくいわれるが,酸性食品をとったからといって,健康人であれば,体液が酸性になるなどということはない。体内の血液や組織液は,炭酸緩衝系の作用によって,pHはつねに一定に保たれている。弱アルカリ性であるはずの血液が酸性になる場合をアシドーシス(酸血症)というが,このようなアシドーシスは,糖尿病や飢餓時にケトン体の生成される場合(代謝性アシドーシス)にみられ,また,呼吸促進の起こる場合(呼吸性アシドーシス)にもみられるが,食べ物によってpHが変動するようなことは観察されていない。一般に,酸性食品を多く摂取する傾向にあるので,注意することが望ましいなどといわれるが,これはまちがった考え方である。食品の酸性,アルカリ性を問題にするよりは,栄養素のバランスを考えることのほうがたいせつである。
執筆者:堤 ちはる
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
食品の灰分中、カリウム、カルシウム、マグネシウム、ナトリウムなどのように、アルカリをつくる無機質よりも、リン、硫黄(いおう)、塩素などのように酸をつくる無機質の含量が多い食品をいう。逆にアルカリをつくる無機質のほうが多い食品をアルカリ性食品という。おもな食品としてリンや硫黄の多い穀類、肉類、魚類、卵、一部の豆類などが含まれる。酸性食品を多くとると体が酸性になるなどといわれたが、体液はつねに水素イオン濃度指数(pH)7.4の微アルカリ性を保つ機能が備わっている。したがって、このような食品の分類と健康を結び付けることは、不適当とされている。
[河野友美・山口米子]
『山口迪夫著、国民栄養振興会・日本栄養士会栄養指導研究所編『アルカリ性食品・酸性食品の誤り』(1987・第一出版)』
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